PR(記事内にアフィリエイト広告が含まれています)
スポンサーリンク
小噺

衝撃発表(1)

嶽花ですけど。
今回、皆様に衝撃発表をお届けしたいと思います。かなり長くなりましたが、最後までお読みいただけると幸いです。
にしてもサイト休止してから再開した直後に毎回毎回衝撃発表の類があるような気が。


今日、仕事をやめてきました。ちなみに次の仕事は決まってません。
ネタでもなんでもなく、本当に、です。ちゃんと嫁には直前に「いいかな?」と聞いて、「いいよ」と即答してもらえたんで。まあ、今日を持って人生観を少し修正しました。強情はらずに、頼れるものがあるときは頼ってみるのもいいかな、と。
これからしばらく、妻と夕食を一緒に取って、一緒にテレビ見て笑って、一緒にこたつでうたた寝して、他愛のない話をたくさんしようと思ってます。
あ、そうだ、本当に新婚旅行にでも行こうかな。北海道とか、もう温かくなってるのかな。それとも沖縄に行って泳ごうかな。大阪で本当に食い倒れてみようかな。このさいだから、ビザってものを所得してみようかな。
まあこれからが大変だとは思いますが、それでもやはり、こういうことになって清々しい気分です。ま、これからも頑張ります。色々と、ね。
この先について書くべきかどうか散々悩んだんですが、妻が寝ついたんで続きを書くことにします。
大学院で超伝導について学んだ俺ですが、先日までは何故かコンパニオン派遣会社に勤めていました(←なんでやねん)。
色々なことがあって唐突に退社を決めた夜、派遣先のお店から帰ってきた女の子達はあまりの突然さにみな驚いてました。しかしこれだけの唐突さだと言うのに、みんな暖かい言葉をかけてくれました。
いつもはすぐに帰る子が俺の退社時間(午前2時!)まで居てくれてたり、「今度お店に奥さんと飲みに来てネ!」とクラブの子に言われて「お金あったらね」と苦笑しながら言ってみたり、なんか涙目になりながらメモ帖で即席の手紙を渡されてみたり、「最後に一緒に写真とってください!」って言われて携帯のデジカメで撮ってもらったり、最後には花束(しかも鉢植え)をいただいたりして、泣かないようにするのが大変でした。今、毎朝水を鉢植えにあげるのが日課です。大事にしていきたいと思います。
職場ではサイト上でのバカ丸だしのキャラじゃなくて、かなり生真面目な風を装ってたもので、正直な話、女の子たちにはあまりウケが良くないかなぁとか近寄りがたいなぁとか思われてるのかと思ってたんで、驚きました。
そういう心境を正直に女の子達に言ったら「何言ってるの、嶽花さんは隠れファンが多いんだから。もっとゆっくり話したいって子、多かったんだよ?」って言われました。
隠れてるなよ! つーか、女の子に興味なさそうって、ここでもまたホモ扱いですか俺、つーか奥さんいるのにホモ扱いですか俺。確かに学生時代に「さぶ」とか購入したりしましたが。
そんなこんなで退社後は、職場で仲の良かったコックさんとモスバーガーにて本音トーク炸裂です。そういう時間もあっという間にすぎ、コックさんが「息子が熱を出したんで、ちょっと悪いのですが、今日はこの辺で……」と帰宅されました。まだまだ話足りなかったのですが、妻もコタツでうたた寝して待ってるだろうと思ったんで、もう帰ろうかな。そう思った 時、突然携帯にコールが。
「嶽花さん、今どこ?」
コンパニオンのKちゃんでした。電話番号を教えたことはなかった筈ですが、会社の短縮ダイアルに登録されてるくらいだから、誰かから教えたもらったんでしょう。
「あ、Kちゃん。今モスにいるんだけど、もう帰ろうとしてるとこだよ」
「えー、もう帰っちゃうの? どうせだから居酒屋とかに言って、もっとお話しません? 今日でもう最後なんだし」
はっきり言って途中でコックさんが帰って寂しかったんで、せっかくだからパーッと飲もうか!ってことに。俺は親父譲りの下戸なんで、ビール一杯で顔は真っ赤っ赤。最後にしんみりするのもなんだと思ったんで、会社では隠してた、サイトに掲載してるような色々な逸話を話し始めてました。昔はモヒカンだったんだぜ?とかムー大陸博物館って知ってる?とか。
そうこうしているうちに、Kちゃんがなんだか真剣な表情になって、小声で話を始めました。なんでも相談があるそうで。
俺がその夜やめた会社はコンパニオン派遣会社で、お店は派遣会社に派遣料金を支払って女の子を斡旋してもらうシステムになってます。ところがKちゃんは派遣会社を通さずにお店に直接入店をしていたんです。派遣会社に来はじめたばっかりで良く分からず、その方が割がいいかな、って思ったそうです。しかし今ではそのお店をやめたくて仕方がなく、どうすれば……という相談内容でした。
なるほど、今日会社をやめる俺だからこそ、そしてコックさんが帰ったからこそ、話せる内容だったんだ。だからモスについてきたんだね、色々大変だなぁ。そう思って俺は自分なりに色々助言しました。それでKちゃんは少しは安心したのか、相談中の硬い表情は隠れ、もとの笑顔が戻ってきました。
そうこうしているうちにビールが効いてきたみたいです。トイレで席を立ち、戻ってきて、少しだけ残ってた自分のビールを飲み干そうとしました。しかしKちゃんはすっとビールを自分の方に下げて「もう、次のお酒頼んじゃったから、飲まなくていいでしょ?」と小首をかしげました。「あ、そっかー、じゃ無理して飲まなくていいか」と俺も酔っぱらってるんで素直です。
そしてお店の人がお酒を新たに持ってきて、残った俺のビールを下げようとしたのですが。Kちゃんはさっと俺のビールを持つと、残ったビールを飲んでしまいました。それ見て俺は「酔っ払ってるなー。もったいなかったんかなー」とか酔っ払ったまま思ってました。
そしてまた他愛の無い話を再開しつつも、眠気と酔いで少しずつお互いに無口になってきました。そして再び、Kちゃんは真剣な表情になって言いました。
「……出ましょうか」
「そうだね、じゃあ支払いは俺がしておくから」
「お願いしますネ!」
と明るく言った直後、Kちゃんは再び真顔になって言うのです。
「わたし、嶽花さんにもうひとつだけお願いがあるんですけど……いいですか?」
「ああ、いいよ。今日で会うのも最後だしね」
「一度私の家までタクシーで帰って、一度こっちまで戻ってきて、また私の家まで戻ってきて欲しいんです」
「いいけど、そりゃまた、どうして?」
「さっきお話したお店ですけど、今日で終わりにしたいと思って。だから自宅からお店のものとか持ってきて、お店に置いてきたいんです。でも、一人だけだと恐くて……」
「ああ、なるほど……あ、ちょっと待って、俺、お金大丈夫かな?」
と情けないことを言いつつ財布の中身を確かめようとする俺でしたが、
「タクシー代は私が出します。だから、お願いします……」
というわけでタクシーで同行することになりました。自転車で通勤してきたんですが、会社で女の子達にもらった鉢植えが大きかったんで、今日はどっちにしてもタクシーで帰るつもりだったんで、ま、いっか。 タクシーの中で何を話すべきかなとか思ってたら、Kちゃんの方から話題を振ってきてくれました。
「嶽花さん、奥さんってどんな人なんです?」
「見た目は可愛いんだけど、性格はかなりヘンテコで退屈させてくれないね。結婚式でも言ったんだけど、そこが好きかな」
「……へえ、そうなんだ……」
「うん、大好き。携帯の待ち受け画面も奥さんにしてるんだ、俺」
酔っ払ってるんで臆面もなにもない俺は、Kちゃんに携帯を渡します。すると携帯の妻の写真を見つめながら、Kちゃんは言いました。
「嶽花さん……一つだけ質問があるんです。答えてくれます?」
「いいよ」
「ねぇ……私と奥さん、どっちが大事?
「ええ?!」
「……わたし、これから自宅に戻ったら、着替えて戻ってきます……」
「そっ、それってどういう意味?」
「女の子にそんなこと言わせないで……あとは嶽花さんに任せますから……」
あまりの事態に沈黙している俺に、再びKちゃんは訊いてきました。俺の携帯を胸にしっかり抱きしめながら。
「今から30分の間だけでいいんです、私と奥さん……どっちが好きです?」
※第二話へ続く

コメント

タイトルとURLをコピーしました