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小噺

オトサン

さて、皆さんは耳かきは大好きですか?
耳かきがないと死んじゃうくらいに好きですか?
No Mimikaki , No Life.
と言いきれるくらいに好きですか?
まぁなかには耳かきをへそに突っ込むくらい好きな人もいるみたいですが、俺はそんな変態じゃありません。でもそれはそれとして結構色々な耳かきを試したりしてます。


たとえば「耳ねんぼー」なる粘着式の耳かき。使いきりの綿棒くらいの大きさの耳かきが500円で50本くらい入っています。薬局で扱っていますが、あまり仕入れているとこはないみたいです。これが意外なくらいに大きな耳垢がとれるし耳に優しいのでオススメ。


たとえば「アイデアの王様」というオモシログッズを扱っているショップで売っている全方向耳かき。どのへんが全方向かというと、先っちょを良く見てください。円形になってるところのどこででも耳かきが可能なのですよ、奥さん! 金属製ですが、適度な強さで使えば極楽気分間違いなし。携帯用であるので、財布にでもしのばせれば街中で急に耳がかゆくなった時でも大丈夫!


たとえば東京は巣鴨の神社内の出店、馬木商店の手作り耳かき。目の前で竹を削って焼いて作ってくれるんですけど、これが絶妙な角度、絶妙な大きさでたまらんです。ちなみに1本1000円から3000円くらい。どれがいいのかと聞いてみたら店のオヤジに「お客さんがどれくらい耳かきがお好きかで買われてはどうです?」とのせられて一番高いのを購入。今これを書いてる合間も使ってます。


で、色々と試した俺ですが、一番アレだった耳かきがあります。皆さんは覚えておられますか。一時期世間を騒がせたイタリア製の耳かき、オトサンを。丸い円錐状の筒を耳に入れ、火をつけて気圧差で耳垢を吸い取ってしまうと言うデンジャラスなブツであります。説明書にも「決して一人でやらないでください。近くに水を用意してお楽しみください」ってな注意書きまであることですし。
そこで大学へ出かけて協力者を探します。タバコも吸わないのにこの日のために初めてライターまで購入して、やる気まんまん。ライターと怪しげな筒を両手に持ちつつ、部室へ行きます。するとこんな時に限って誰もいやしません。さすがに真夜中だったし。
仕方がないので研究室へ。すると運良く、何人か後輩がいます。さっそく彼らを引き連れて階下へ。研究室だとスプリンクラーが発動する恐れがあるからであります。階段なら喫煙場があるくらいだし、灰皿もあるくらいだから安心です。
人気もなく暗い校舎の階段のロビーのソファの上、俺は贅沢に寝そべってました。

イメージ図(使用前)
周りから見てるとどんな様子か分かりやすすぎるんですけど、実際にぶっ刺されている身の上では自分の間抜けな格好なんて分かりやしません。つーか見てえ、見てえんだよ、この目で!
と駄々をこねはじめたところ、後輩たちは「あ、コレなんかどうでしょ」とか言って手にしていたCDを渡してきます。
「……この虹色の鏡を使え、と?」と目で語りかけてみると「じゃあ鏡を探してきます」と言って彼らは夜闇の中に消えていこうとします。
「一人で暗闇の中じゃこええだろ、ぁああん?」とか目で訴えてみたところ、彼らは無言でオトサンに火をつけて研究室へ登っていきました。

イメージ図(使用後)
暗闇の中、たった一人でソファーの上、オトサンに火をつけたまま寝そべってる俺。耳にはゴオォォォという激しい効果音が響くし、なんかやたら煙臭いし、なんか耳が焼けるように熱いし、とにかく落ち着かないんだけど動くわけにはいかないし。結果的に慎重にモゾモゾしている俺がいるわけで。
すると、ようやく待ちわびた足音が。後輩たちが鏡を持ってきてくれた……のかと思いきや、足音はどうも一人のような気が……こんな真夜中に誰が……まさか……いや……そんな……
幸か不幸か、階段には背を向けて寝そべっている俺。おずおずとCDを斜めに掲げ、背中の向こうの世界を垣間見てみました。なんか白いものが見えたような気がしました。それは一般的には白衣と呼ばれるもののような気がしました。気のせいだと思いました。だって何も言わずに立ち去っていったし。気づかなかったんだよ、俺のこと。
たとえ俺が真夜中の校舎で耳から火を出し、煙をもくもくと上げていたとしても。


翌日のゼミにて、異様に早口でゼミ発表をしている俺がいるわけで。何故かM先生と決して目を合わせないようにしながら。何故か発表中に走馬灯のように思い出が再生されながら。
……ニンテンドー64を研究室に持ち込んで遊んでたらM先生が来たんで「ビデオ編集用の機材です!」と言い張ったらニコニコしながら「コントローラー4つも買ったんですか。凄いですね」と言われたなあ……
……コンタクト買ったのはいいけど火山灰で目が痛かったから水中メガネはめて学校に行ったら、エレベーターでM先生と二人っきりで乗ってしまって物理的にも精神的にも逃げ出したい心境の俺に、先生は優しく言ってくれたよなあ……「かっこいいですね、そのファッション」と。ぎこちない口調で。
精神崩壊直前のまま、何とか発表を終えた俺。M先生はいつものように優しくアドバイスをしてくださいました。そして最後に「ちょっと今日は早口だったみたいですね」とつけそえつつ。
そして無事にゼミは終了。何事にも触れられずに無事終了。あとは逃げ帰るだけだ!と思っていると、最後に先生は「今日は特に連絡事項はないです」とおっしゃいました。そして更におっしゃいました。
「あと、火事にはきをつけてくださいね」


ちなみにこのオトサン、実は耳垢じゃなくてロウが溶けて噴出するばかりか、ロウが耳の中に入っちゃて訴えられたりする代物だったりします。耳に入れずに燃やしても”耳垢”が出る、ってあたりが何とも。
この事実を知った今、しきりに思うのです。あの時自分は何を求めて何がしたかったのだろうか、と。そして何が得られたのだろうか、と。

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