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小説

ぼくのメジャースプーン

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

辻村 深月
講談社
2009-04-15

カノジョが毎日30分ずつ一緒に読もう、というのでまったく前知識なしに読み始めたのですが、序盤を読み終えたら一気にそのまま読み終えてしまいました。ジャンルすら分からないまま「図書月間用だから、たぶん文学とかだろう」と勝手に思っていたんですが、まさかここまでしっかりとしたミステリーであったとは!
序盤のほのぼのしたシーンで、ふみちゃんという女の子の人となりを丁寧に描写してくれるので、少ししたらすっかりふみちゃんの事がみんな好きになってしまっている事でしょう。だからこそ、その後で起こる事件に対し、まったく他人事とは思えなくなるくらい感情移入してしまいます。
地味ながらも伏線などをしっかり巧みに用意したミステリーなので、普通に読んでもかなり面白いのに、単なる娯楽作品にとどまっていません。罪と罰、という普遍的なテーマを扱っているのですが、説教くさくはなく自然に読者に問題点を提示してくるのです。登場人物達に感情移入していると、単なる倫理学の授業で質問されているのとはまったく違う、切実さが胸に迫ってきます。
決してひとつの答えに収まらない難しい問いかけに対し、作中で提示されるのはなかなか興味深い内容でした。皆さんも実際にこの作品を手にして、自分なりの答えを考えてみたり、物語がどういう結末を迎えるのかを想像したりしてみてはいかがでしょうか。
キャラクターの魅力がかなりのものなのですが、この作者の方の作品はそれぞれ世界観がリンクしているようなので、また他の作品も手にしてみようかと思います。この作品に出てきた誰かと、そのうち再会できるのではないか、と期待しつつ。
この作品を手にするきっかけになった某ゲームは、商品としては正直援護しようのないくらい酷い代物ではあったのですが、これだけの傑作を読む機会を与えてくれた、という点では素直に感謝したいと思っています。

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