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小説

カラスの親指

道尾秀介氏の作品と言うことで、どうしても身構えてしまいましたね。普通だったら「最後の展開が凄い」とか書かれるだけでも気になるタイプなんですが、道尾氏はもう別格ですね。彼の作品はかならず何かをしかけてくる、って皆が知ってるからいまさらそれを言っても被害は少ない気さえしてきます。このあたりは折原一氏を髣髴させるものがあります。
そういう訳でいつも以上に用心しながら読んだんですが、幸運なことに勘が鈍いので今回もしっかり作者に騙されて安心しました。読み返すとちゃんと要所要所に伏線がはってあるんですが、そこに違和感を抱かせる前に他の伏線っぽく見える描写で覆い隠している感じでした。木を隠すなら森の中に、伏線を隠すなら伏線の中に。いつもながら鮮やかなお手並みでした。
本作は詐欺をテーマにしたコンゲームもののミステリーなんですが、ちゃんと詐欺行為を否定していたのが印象的でした。日常生活だと当たり前なんですが、娯楽作品では割と詐欺とかは非難されない傾向が強いと感じています。そこを説教くさくならずに表現し、しかもそれが人物描写も備えていて上手かったですね。
昨年出版された『ラットマン』(感想)とあわせて比較されそうですが、どちらも完成度が高いからここまで来ると後は好みの問題ですね。個人的には『ラットマン』の方が好きですが、展開に波があって退屈しなかったのは本作の方でしょうか。まぁ自分はどっちも好きですよ、ということで。

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