派手なトリック、超人的な探偵、といったものは登場しません。あくまで真正面から推理を楽しんでもらおう、といった趣旨の推理小説です。登場人物も無闇に多くはなく、事件現場の見取り図なども分かりやすく書かれており、本編の節目節目において下記のような説明文が挿入されていたりします。
まず本編の主人公が登場する
主人公は語り手でありいわばワトソン役
つまり全ての情報を読者と共有する立場であり
事件の犯人では有り得ない
和夫は早速新しい仕事に出かける
そこで本編の探偵役が登場する
探偵役が事件に介入するのは無論偶然であり
事件の犯人では有り得ない
これらの文章には嘘が全く含まれていないので、余計な可能性は切り落とされ、推理もし易くなるのではないかと思います。とはいえ自分は推理とか苦手なたちなので、あくまで深く考えずに一小説として読み進めていきましたが、それでも期待通りしっかりと面白くて満足。読了後に伏線の確認をして「ああ、なるほど」とニヤリとする、あの楽しみ。推理小説ならではのカタルシスを味わってみたい方にはおすすめです。
余談ですが、この作品のAmazonレビューには酷いネタばれがあるので要注意です。読了後に見たから良かったですが、読了前に見てたら最悪でした。読了後に見てもかなり気分が悪くなりましたが。
Amazonの読者レビューは「カスタマーレビュー・ピックアップ」と「カスタマーレビュー」の二種類があり、前者の方が投票などで比較的安全なものだけ抜粋されているようです*1ので、そういったところも注意しておいた方がいいかもしれませんね。悪質なレビュアー（こんな呼び方もしたくないですけれど）はフィルタリングして表示できないような機能が出来ないかなぁ、と思う今日この頃です。
- 注1 ： それでも安全とは言い切れないようですが……
コメント
アマゾンの書評はよく見るのですがネタバレの場合があるんですね。推理小説のときは気を付けないといけませんね。
倉知淳は2冊読んだことがあります(「占い師はお昼寝中」「まほろ市の殺人春」)が「星降り山荘の殺人」はまだです。
調べてみるとこの作品は真保裕一が「奪取」で日本推理作家協会賞を獲ったときの候補作なんですね。相手が悪すぎました。
今度、探して読んでみます。
アマゾンはゲームとかだと発売日前なのに信者やアンチがへんてこな書き込みがあったりとか、奇妙な状態になってることもあったりしますので、そういうこともあるものだと思って注意してみておいた方がいいかもしれません。
そういう意味だと、星の平均点と投票数だけ斜め読みして、最低限の情報しか仕入れないで手に取ってみる、というのが一番安全なのかもしれません（万全でもないですが）。
この作品は大作というよりは粋な小品という印象ではありますが、このミスとかではやはり高評価だったようですね。人によっては好き嫌いがあるかもしれませんが、すでに氏の作品を読まれてるのでしたら問題ないように思えます。