アヒルと鴨のコインロッカー

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

伊坂 幸太郎
東京創元社
2006-12-22

正直言って、最初はあまり期待していませんでした。奇妙な人物が沢山出てきて事件が次々起こって、というミステリーが好きな自分ですから。導入部分が割と日常的なので、完成度の高さがどうのこうの以前に、好みに合うかどうかという点でどうなるんだろうか、と思っていたわけです。
しかし読み進めていくと、やっぱりこれは伊坂印のれっきとしたミステリーでした。最初はテンポがゆるめに思えていたストーリーもだんだんと目が離せなくなり、いったい何があったんだよ、これからどうなるんだよ！って感じで引き込まれて一気に読了。
伊坂氏には何故かミステリー的な驚きを期待せずに読んでしまうのです。というのも文体やキャラ造形が魅力的すぎて、もうそれだけでお腹一杯って感じで。それなのに大体どの作品にもきっちりとサプライズが用意されてるのが凄すぎます。こんなに豪華でいいの？って感じで。というか、その雰囲気から深く考えたり構えたりしないで読んでしまうんですよね、自然と。そこがまた凄いんでしょうけれど。
けっこう地味かもしれないけれど、色々と気がきいてて少し切ない話になってるから、とりあえず手にしてみてから内容は判断してみた方がいいかと思うよ。と、昔の自分に言い聞かせておくことにします。