君の地球が平らになりますように

感想

特殊設定ミステリ『楽園は探偵の不在なり』で我々の度肝を抜いてくれた斜線堂先生による恋愛小説、と聞いて正直どんな代物が出てくるか想像もつかなかったんですが、こちらの想像を遥かに超えた代物でした。

地獄について知りたければ、大分県の地獄巡りや地獄草紙を鑑賞するよりも、本作を読むべきでしょう。誰も殺されたり怪我したりはしないのに、地獄としか思えない状況の数々。一枚の絵画ではけっして表現できない地獄がここにあります。本作を読むことで、地獄とはいったい何なのかといった理解度が上がり、地獄を見つめる解像度が増すに違いありません。

そもそもふだん自分が読んでる小説のジャンルはミステリーやSFが多く、恋愛小説を読み慣れていないうえに、現実世界での恋愛偏差値がかなり低いと自認してる状況です。いかんせん交際した女性は妻、あとは3人のカノジョ（とわの高校生として）だけですから。

そんな自分が本作を読んで恋愛についてどうのこうの言える立場じゃないとは思うんですが、あえて言わせてください。

絶対これって普通の恋愛小説じゃないですよね？　世間一般の人が恋愛小説と聞いて思い浮かべるような代物じゃないですよね？

恋愛小説と聞いて本作を読んだ自分の心境ですが、『ショーシャンクの空に』を観てスティーブン・キングがホラー作家と知らずに『ミスト』を観てしまったカップルを思い出してしまいました。あのカップル、今度は『ザ・メニュー』をオシャレなレストラン映画と思って観に行っててくれてたらいいなぁ……

そんな事を思ってしまうのも無理ないと思います。だって収録作ってこんな感じなんですよ。

君の地球が平らになりますように
もしも、大好きで、でも手が届かない人が陰謀論にハマったら……？
……わたしでもつきあえるかも。

転ばぬ先の獣道
結婚してくれない彼氏。ふと魔が差してマッチングアプリで違う男と出会ったら……

『彼女と握手する』なら無料
握手は1回3,000円の地下アイドルにはとある秘密があった。

大団円の前に死ぬ
ホストと結婚したい女の前に、生き別れた姉が現れる。ホストを巡り死闘がはじまった。

平らな地球でキスはできない
書き下ろし

自分がイメージする恋愛小説って、もっと甘酸っぱかったりキラキラしてるものなんですけれど、本作の場合はギラギラしてるというか、あまりにも生身の剥き出しな人間模様でした。喫茶店でほどよく水で薄めたカルピスを注文したつもりが、カルピス原液で出されたかのような。いや、この例えはちょっと違うかも。甘い要素、あったっけ？

自分の現実世界での恋愛経験において、腹のさぐりあいとか手札の切り合いといった駆け引きとかがなくて、出会った初日に「ちり紙みたいな焼肉でも食ってろ！」と言われたりとか、グーとグーで殴り合うというか小細工なしで直球投げ合う感じでして、そういえば妻にプロポーズしてなかった^[A] … Continue readingと25年以上たって気づくくらい、何もなかった。虚無！　回想してみても虚無だ！

だから本作で描かれてる恋愛模様は色々と強烈でした。恋愛というのは不治の病シンドロームであり、綺麗事ばかりじゃないんだなぁ、と。なんというか恋愛小説というよりホラー小説を読んだかのような心境でもあります。なによりも一番怖いのは、人間……

とはいえ眩しくも感じたんですよね。自分はもう老後も意識するような年齢になり、徐々に色々な欲望が薄れていくのが怖くもある心境なのですが、本作の登場人物達はみな欲望に溢れていて、生命力豊かじゃないですか。これぞ生きてる、って感じがする。あまりにも眩しくて、心の中で目を細めるかのような心境。

DOAXVVの有償ガチャ5千円程度も怖くて手を出せない自分にとっては「茶番！　回想してみても茶番だ！」と言いながらも二百万円する酒を貢ぐ勢いが羨ましく感じました。自分は最近心臓の持病が見つかっていつまで生きられるのかよくわからない状況になっちゃったんですけれど、この太い生き様は見習いたいな、と思うのです。冷静に考えれば小説の中の架空の人物なのですれけど、自分にとってはそこに彼女が確かに居る、と感じられるのです。その逞しさにあこがれてしまうのです。

もしかしたら人生初の恋愛小説が本作かも？　それってどうなんだろ？と思ってしまいましたが、もう童貞喪失してしまったのだから、せっかくだからこの勢いで次はこちらの作品にも手を出してみます。毒を食らわばなんとやら、の精神で。

”愛”についての解像度が高まることを期待するばかり。

色紙が当選！

この作品、こういう企画があったのです。

新作恋愛小説の公開に伴いまして『君の地球が平らになりますように』の感想投稿キャンペーンを行います！　タグを付けて感想を投稿してくださった方の中から10名を選び、サイン色紙をプレゼント！　よろしければ是非ご応募ください！　#君平　#読書感想 https://t.co/PwEEftIe7K

— 斜線堂有紀 (@syasendou) January 16, 2023

まぁ当たらないだろうとは思いつつも、枯れ木も山の賑わいといった心境で記念応募してみたところ、なんと当選しました！　

嬉しい、家宝にします！

と喜び勇んでツイートした後、残りの9名の方も絶対に届いたらツイートされてるのではないかと思ったら、やはり皆さんツイートされてますね。

他の方の感想も見てみたいと思ったので、勝手ながら先生に選ばれた皆さんの感想も引用させていただきました。

hiroさん

普段あまり恋愛小説は読まないのですが、斜線堂先生の作品は特別です
必ずしもハッピーエンドでない、ときに地獄のような描写にミステリ作家ならではのテクニックを感じます。
これかはもずっと応援してます(本格ミステリもお待ちしてます…！)#君平 #読書感想

— hiro (@cheese_427) January 30, 2023

斜線堂有紀先生、選んでいただきありがとうございました(´▽｀) https://t.co/iUAmknostI pic.twitter.com/XjY1YuuBcr

— hiro (@cheese_427) April 13, 2023

ミッミさん

斜線堂先生の恋愛小説は、自身の恋愛に身を焼べる主人公の圧倒的な存在感が魅力的です。共感できることもあれば、ただただ黙って見届けることしかできなくなることもあるのですが、それもまた鮮烈な読書体験として得難いものがあります。これからも情緒をぶん回してほしいです。#君平 #読書感想

— ミッミ (@keibuyabai) January 27, 2023

『君の地球が平らになりますように』刊行記念企画（感想文キャンペーン）のサイン色紙が届きました！　斜線堂有紀先生、編集部のみなさん、ありがとうございます！　バギちゃんも可愛いです！　#君平 pic.twitter.com/17sXAcLm3e

— ミッミ (@keibuyabai) April 13, 2023

牛丸 イラストさん

全然上手くツイートできなかったんで、極小の文字で失礼します、、、。 pic.twitter.com/KcQyB41nux

— 牛丸 イラスト (@usimarrrrrrrrru) January 29, 2023

#君平
斜線堂先生の色紙届きました！
めちゃくちゃ！嬉しいです！！！
関係者の方々本当にありがとうございます
家宝。。。。 pic.twitter.com/citVTFAFOj

— 牛丸 イラスト (@usimarrrrrrrrru) April 13, 2023

ああそうかさん

#君平　#読書感想
誰も真似出来ない恋愛観で出来ている1冊(⁠・⁠∀⁠・⁠)
そこまでするのかと思えるし、チャンスを得る為に考え筋道立てながら行動する姿勢に舌を巻く。
いろんな価値観があるから本人には正解なのかもしれないが、他から見たら愛の形に正解がないように思える不思議さがありました。

— ああそうか (@yarukidasu_) January 25, 2023

JUMP j BOOKS編集部様より @JUMP_j_BOOKS
『君の地球が平らになりますように』感想キャンペーンにて斜線堂有紀先生の直筆サイン色紙いただきました、ありがとうございます(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)
1度は読んでみた方がいい。
客観視出来てる？それとも・・・自分も陥ってるかもしれないと考えさせられます！ pic.twitter.com/NkiXm9ugCF

— ああそうか (@yarukidasu_) April 13, 2023

ぬい達の本棚さん

#君平　#読書感想

斜線堂先生が創造した恋愛エレベーター[君平]は地獄行き。乗ったら最後、5人それぞれの恋愛地獄へ急落下する。1番の地獄は大団円かと。
～君平の恋も地獄も有紀次第～
彼女達にはいつか、恋愛覇者になってほしい。一生懸命に生きる恋愛勇気を応援して、次の地獄も見たいです。 pic.twitter.com/aTmaH2s6ef

— ぬい達の本棚 (@DonkeyMidori) January 23, 2023

おはようございます#君平

『君の地球が平らになりますように』読書感想
斜線堂先生のサイン色紙プレゼント企画に応募して、10人の中に選んで頂きました。
とっても嬉しく、
ありがとうございます。大切な宝物になりました。 pic.twitter.com/mTVnB5XhtT

— ぬい達の本棚 (@DonkeyMidori) April 14, 2023

えとさん

「何かを得るためには何かを失わなくてはならない」っていうことを再認識させられるような小説でした。
先生の書く恋愛小説はいつだって本物で生暖かくて本当に大好き

恋って、愛って醜くて美しい。
この恋はきっと地獄に繋がっている。

— えと (@shasendou_eto) January 30, 2023

斜線堂有紀先生の描く世界の登場人物はみんな人間くさくて大好きだし、内容ももちろんフィクション感強いものもあるけど読者を置いてけぼりにしないというか…こっちをちらちら見ながら前を走ってくれてる感じがする(伝われ…)

— えと (@shasendou_eto) January 30, 2023

JUMP j BOOKS編集部様主催の斜線堂有紀先生のサイン色紙企画で
大変恐縮ながら10名のうちの一人に選んで頂けました…( ՞߹ – ߹՞ )✨️
大好きな斜線堂有紀先生のサイン色紙…幸せすぎてもう何も思い残すことは無い…
これからも先生は永遠に私の小説の神様です٭ pic.twitter.com/flKFt51zxy

— えと (@shasendou_eto) April 13, 2023

紙ちゃん@読書垢さん

恋人がいると公言していないことにショックを受ける桃華。
二人がいいならそれでいいという言葉があるけど、どうしたって人には対外的な評価はつきもので、恋とか愛とかって相対的なものなのでは、と考えさせられました。恋愛に限らず誰もが経験したことのある感情が詰まった一冊だと思います。(終)

— 紙ちゃん@読書垢 (@schmutzigeMusik) January 29, 2023

斜線堂先生のサイン色紙をいただきました…！嬉しすぎる 家宝にします…！！

お忙しい中色紙を書いてくださった斜線堂先生、素敵なキャンペーンを用意してくださったJUMP j BOOKS様、ありがとうございました https://t.co/Iua0XhFmyr pic.twitter.com/8JmbWGLoky

— 紙ちゃん@読書垢 (@schmutzigeMusik) April 13, 2023

猪籠草さん

『大団円の前に死ぬ』が特に好きです。血で血を洗うような戦いをしてるのに、途中奪い合われてるはずの担当を置き去りにしてまで行われる姉妹喧嘩がどことなく笑えて、読後感が爽やかなのがまた好きです。
タイトルも秀逸で好きです。
#君平 #読書感想

— 猪籠草 (@utubokazura55) January 16, 2023

『君の地球が平らになりますように』感想キャンペーンの斜線堂先生の色紙届きました！
ありがとうございます！！！
大事に大事にします！！！ pic.twitter.com/88eH0T5MD9

— 猪籠草 (@utubokazura55) April 13, 2023

うめださん

東京グレーテル、とんでもねぇグループだな……マネージャー大変そうう……となりながら『彼女と握手する』なら無料が好きです( ・`д・´)

— うめだ (@umeda_ihuku) January 30, 2023

『君の地球が平らになりますように』刊行記念企画の感想ツイートキャンペーンにてサイン色紙をいただきました。
斜線堂有紀先生、編集部の皆さんありがとうございます!!!!!!!!!!m(_ _)m
名前も入れてもらえたの、更に嬉しい(⁠*⁠´⁠ω⁠｀⁠*⁠) pic.twitter.com/WfXRyok1ie

— うめだ (@umeda_ihuku) April 13, 2023

ろまんさん

表題作はもちろんのこと、私は「転ばぬ先の獣道」に特に思い入れてしまいました。個人的にややトラ側に寄った視点から物語を読み進めたのですが、"これまでみたいにそこそこうまくやっていく"道が閉じていくあの過程が胸にきました。不可逆…！　先生の書く恋愛小説が大好きです！　 #君平 #読書感想

— ろまん (@romantic_over) January 25, 2023

『君の地球が平らになりますように』の感想投稿キャンペーンで斜線堂先生のサイン色紙をいただきました！！♡ めちゃくちゃうれしい〜✨ サイン色紙ってこんなにおっきいんだ！？　大事にします！！ pic.twitter.com/uSxk1eYzoP

— ろまん (@romantic_over) April 13, 2023

終夜青さん

「君の地球が平らになりますように/斜線堂有紀」
地獄の中を突き進んでゆく恋愛短編集。苦しいのに最後までページを捲る手が止まらなくて、読み終えたとき、自分の全てを炎にくべて恋をする彼女たちをほんの少し、羨ましいと思ってしまう自分がいました。#君平　#読書感想

— 終夜青 (@yomosugara_sei) January 30, 2023

でも、地獄の恋愛にも幸せな瞬間は紛れもなくあるんですよね。それだけで地獄だって歩んで行けてしまう。最初は主人公たちに共感できなかったはずなのに、いつのまにか理解できてしまうし、目を逸らせなくなっていきました。これからも斜線堂先生の小説を読み続けます。

— 終夜青 (@yomosugara_sei) January 30, 2023

「君の地球が平らになりますように」読書感想キャンペーンにてサイン色紙をいただきました。
JUMP j BOOKS編集部並びに斜線堂有紀先生、ありがとうございます！ pic.twitter.com/0bYATh3kYx

— 終夜青 (@yomosugara_sei) April 15, 2023

最後に

気のせいかもしれませんが、ひょっとして10名より多くないか賭けません？

11人いる!　いや自分いれて12人いる!

皆さんの感想が素晴らしすぎて、先生が10名に絞りきれなかった説が有力です。

もしくは10人というのが12進数という先生渾身の叙述トリックだった……？！

なにはともあれ、当選した方々、おめでとうございます！