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はじめに

ザ・メニュー | Searchlight Pictures Japan

普通であればどういう映画なのか知ってから映画館に行くべきでしょうけれど、本作に限っては予告編も見ず、ジャンルすら知らずに見に行ったほうがより楽しめるのではないでしょうか。

当記事では後半からネタバレ感想と断ってから具体的な感想を述べさせていただきますが、あらゆる匂わせからも逃れたまま見に行ってもらいたいので、当記事の冒頭すら読まずに映画館へ行ってもらいたいです。

いちおう断っておくとR15ではあるんですが、そこまで露悪的な表現はないです。

しかしながら万人には勧められません。

配給会社もニッチなニーズ向けと分かってて制作しているそうで、その心意気が貴方に合うか否かは、実際に見てみないとわからないでしょう。

見に行ったきっかけ

自分の好きなミステリー作家さんらが、奇妙な紹介をされてて印象に残りました。

謎すぎる紹介ばかりなので気になってきて、Filmarksで点数だけざっくり見てみたんですが、自分と価値観が近いと思ってフォローしてる人達の筈なのに、なんだか評価が割れてるような気がします。

謎すぎる状況のあまり、どんな番宣よりも見たい気持ちになったのか、その夜は夢にまで出てきてしまいました。観たことない映画なのに。

正直自分に合うか否かは分からないんですが、いづれにせよ何らかの強烈な印象を残すのではなかろうか、と思って寧々さんとレイトショーに出かけたのでした。

寧々さんとレイトショー

果たしてその結果はいかに……?

ネタバレ感想

ここからネタバレ全開で、映画の内容について触れていきます。

人を選ぶ作風

率直に言うと伏線回収をするつもりが無いタイプの作風なので、そういうのが無いと納得できない人には評価が悪くなりそうな気がします。

たとえば樽を取りに行かせた理由がはっきりしないとか、人物の掘り下げがそこまでないとか、そういうところはテンポ良くするためにわざとやってるのではないでしょうか。

そういうわけで確実に人を選ぶ作品だと思いますが、自分は幸いにして面白く楽しめました。

今年の盆前くらいに突発性難聴になってからは、気を抜くと耳鳴りがなるようになったにも関わらず、この作品を観てる最中は一度たりとも耳鳴りを感じなかった、というだけでも見たかいはあったと思います。気がついたら終わってた、って感じで退屈する暇さえ与えられませんでした。

カリスマ性のある怪演

なんといってもシェフの佇まいが素晴らしい。

手を鳴らす挙動だけで、こいつは只者じゃないと知らしめる演技力が白眉です。

手を鳴らして注目を集めたあと、軍隊かカルトかと見紛う雰囲気の中、レストランで言うセリフがこれって時点で、もうまともじゃない。

Don’t eat.食べないでください

実際はこのあと「味わってください」と言葉が続くんですが、最初の言葉がこれってインパクトありすぎて、これは凄いことになってきたぞ……とつばを飲み込みつつ覚悟を決めました。

R15なんだか、これはもうカニバリズムとかエグい料理とか凄いゴア表現が来るんだろうな、と。

しかしながら意外なことに、そこまでは露悪的ではなかったです(まぁたまに人の指が切られたりしてましたけど)。

ほとんどの料理がアートのごとく見た目が美しく(それでいて美味しそうに見えない)、それが逆に狂気を際立ててる感がありますね。

ナイフを振りかざしてくるような直接的な暴力ではなく、もっと得体が知れず光が見あたらない感じとでも言うんでしょうか。

伏線回収といった余分な説明をしないことで、底が浅くならないようにして不気味さが増している気がします。

ただ、この辺りが人によっては納得感がなくて、低評価に繋がってるようなので両刃の剣ではあるんですが、個人的には刺さりました。

ミッドサマーみたいな印象もあるのですが、狂ってる方向性が違うように感じます。

料理を突き詰めたあまり、なんでああなっちゃうのかやっぱり理解できないし、そこが不気味で素晴らしい。

腹を満たせない料理を出すまで拗らせちゃってるあたり、常人にはついていけません。

わけがわからない、それがいい。

裏切り者の末路

批評ばかりで料理したことが無い人間が現実を思い知らされるくだり、映画を作った事がないのに失礼な物言いばかりして常にネガティブレビューしかしてないような輩が天誅くらってるみたいでザマァ!って大喝采ですわ。

彼が自殺する直前に、シェフが耳元で何を言ってるか分からないのも不気味すぎて、凡人には理解できない感がよい。

逆に言うと、この嫌な人物をあそこまで演じた力量がすごいですね。キマりすぎやろ、って。

客が12人(シェフの母も含めると)という事で、これはシェフとともに描かれた最後の晩餐なのかなという気もしたんですが、自分にはよくわかりませんでした。しかしながらそう考えさせられてしまうくらいに奇妙な神聖さや荘厳さを感じ取ってしまいました。

パンフレットの解説を拝読して腑に落ちたんですが、ユダは最後に首吊り自殺してるので、直接的ではないけどやはりこれは意図的なんだろうな、と思います。

運命の分かれ目

テイクアウト可能な料理が出てくるくだり、パァン!という音が契機となった気がします。

劇中でも「ずっとやるの?」って言われてて自分もそう思ってたんですが、あれをこう使って打破してくるかと感心しました。

シェフが皆に告げる前の合図と化していた手の音、それを彼女が発することにより、提供される側と提供する側の架け橋になったと解釈しました。

そのあと芸術への拘りから解放され、楽しそうにもてなしの心を表に出しつつ料理をしてるシェフの表情が印象に残りました。

でもこのあとデザートはちゃんと出しちゃうあたり、ちょっとやそっとじゃ拗れた魂は元に戻らないんだなぁ、と。

個人的に気になった点

かなり気に入った作品ではあるんですが、一点だけ気になったところがあります。

中盤くらいでシェフの目的がほぼ明かされてしまう点です。

ある意味斬新ではあるんですが、できれば謎のまま最後まで伏せて、最後の料理の原材料のところでゲッと思わせてくれたほうが、よりストーリーの吸引力があったかな、と。

給仕する側、食べる側、どっちにつくかという二択を迫るために必要な情報だったとは思うんですが、あそこまではっきり言わずに少し濁すくらいでも良かったのではないでしょうか。

まぁそれはそれとして最後のデザートには笑いましたけど。

ジャンルは何なのか

普通だとサスペンスとかスリラーと分類されるかもしれませんが、上述した不条理感が極まって自分的にはコメディでした。

実際何度か笑っちゃったし。

大真面目に悪趣味なことをやってくるさまが、皮肉という名のエッジが利いてるなぁ、って。

・概念みたいで全く美味しそうに見えない料理の数々
・スタッフが自殺したあとに「メニューに含まれています」と大真面目に発言
・女性シェフを説得しようとしたら「死ぬのは私のアイデアなんです!」と嬉しそうに語る彼女へ対する皆の冷めきった反応
・パンがないと言ってるのにテイクアウトの料理は作る
・最後のデザートの材料(というかあの状態で誰が味わうの?)

殆ど人が居ないレイトショー、静まり返る観客の中、声を出さないように笑うのに苦労しました。

このあたりの感覚、パンフレットでのインタビューを読んで頷くばかりでした。

風刺というのは、笑っていいのか悪いのかわからず、少し自信のない笑いを誘発するけれど、気がつくと、劇場でほかの人の笑い声が聞こえる、そんなものだと思うのです。もし理解できなければ、風刺が鏡に映し出している私たち自信の姿を見ればいいのです。そうすればきっと、私たちはそんな自分を笑い飛ばすことができるのではないでしょうか。私はそんなふうに、観終わってからも簡単に消化できず、誰かを語り合いたくなるような映画が好きです。

その昔妻と二人で『ミスト』を見に行ったら、スティーブンキングをホラー作家と知らなかった思われるカップルが居て笑ってしまったんですが、『ザ・メニュー』をオシャレグルメ映画と勘違いしたカップルとかが見てほしいなぁ、って心の底から思います(満面の笑み)。

最高のバーガーを求めて

レイトショーが終わったあとはあいにくお店が閉まっていて、パンフレットを買うこともチーズバーガーを食べることもできなかったので、翌日パンフレットと最高のチーズバーガーを探しに行きました。関東とかだとヴィレッジヴァンガードダイナーでインスパイアされたバーガーが食べれるみたいなのですが、あいにく九州在住なので近場で探してみたところ、美味しいお店を見つけました!

最高のパンフレットと最高のチーズバーガー

博多駅の10階にあるB.B.M 博多のEXチェダーチーズバーガー、店員さんが目の前でとろとろのチーズをかけてくれるサービスがあります。

EXチェダーチーズバーガー

なかなかインパクトある風景でしたので、記念に動画撮影してもいいんじゃないでしょうか。

なおテイクアウトは可能です(オマケはありませんが)。

まとめ

個人的には『羊たちの沈黙』のレクター博士や、『ノーカントリー』のシガーといった人物に並ぶほどのインパクトのある怪演を見れて大満足です。

一生忘れられない存在感がある作品ではないでしょうか。

変わった映画を観たいという人にオススメします。

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