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小噺

桜島ザンギエフ伝説(4)

桜島ザンギエフ伝説 小噺

花火を買いにおもちゃ屋さんにやってきました。

薄暗いビルの入り口には、天狗の大きな面が飾ってありました。でも昼に来たのに何故か閉まってました。

定休日かと思ったら看板には「午後6時〜午前6時 営業」とか書いてあります。どうも花火を扱っているような「おもちゃ屋」では無かった模様。

いや、売ってるのかもしれんけど。違う意味で。オトナの為に。

「いやぁ、間違えちゃったよ!」

卑語くん、こういうボケをする為には労力を惜しみません。


今度は普通のおもちゃ屋さんに来ました。そして卑語くんらはブツを閲覧する為に分散しました。

卑語くんの手にとっているジャイアントロボのおもちゃや、何かが腐りきった連中の手にしているセー*ームーンのフィ*アは果たして花火なのだろうか、とか思いながら、俺も周りを見ました。

すると子供が、発売されたばかりのスーパーファミコン版のスト2を一心不乱にプレイしてます。どれどれ、と思いながら近くに行って画面を見ると彼はガイル(かっこいいアメリカ軍人)でプレイしていました。相手のキャラが動かないので妙だと思ったら、2人対戦プレイを1人でやってました。

ソニックブーム、ソニックブーム、小パンチ空ぶり、ソニックブーム……

飛び道具の技の練習のようです。時々失敗している辺りがお茶目さんだな、とか思ってソニックブームの行きつく先を見ました。哀れ、木偶の坊と化して練習台になっているキャラは……

ザンギエフでした。

俺、いっつも思っていたんですよ。

どうしてスト2シリーズの説明書で技の説明の所で、技を食らう実験台になってるのはザンギだけなのか、って。

防御力が他のキャラより無駄に高いからですか?

それとも、体がでかいせいで、某メストにいつも対ザンギ専用連続技とか掲載されてたからですか? 

でも、載ってなかったら載ってなかったで寂しいと思う俺って身勝手?

といった事を思いながら、じっと見てました。無言で、後ろから、ずっと、じっと、腕組みしながら、グラサンの奥から。

暫くすると、お子様は何かの気配を察したのか、遂に振り向いてしまいました……俺の方に。

ビビクンッ!

もう見飽きた反応に、俺としてはあくびが出そうな思いでした。でもお子様にとっては貴重な体験だった事でしょう。

ところが驚いたことに、涙目になりながらも彼は逃げませんでした。

ほほう、と思っていると、すぐにリセットして2人プレイを始めました、一人で。じっと見ていると彼はまたもや自分用にガイルを選びました。

そして被験体となっていたザンギエフの代わりに中国娘・春麗を選んで練習開始!

小パンチ、小パンチ、小パンチ、ソニックブーム、小パンチ、小パンチ、小パンチ、小パンチ……

気のせいかさっきよりソニックブームが出なくなっているような。

彼の小さな肩が震えていたのも気のせいでしょう。しかし、こんな思いをしてまで逃げ出さないとは……

俺は密かに奴を漢(をとこ)と認めました。1時間後には顔すら覚えてなかったですが。


花火を買った後、すっかり増長しまくって繁華街を闊歩する俺でした。

気分はすっかりモーゼ。俺が通るだけで人の海が割れていきます。すると

「あれ? 嶽花くん(仮名)じゃ……」

光のようなスタートダッシュだった、と人は言います。

けっして振り向かずに走りました。卑語くんが叫んでましたが、俺、精一杯走りました。背を向けたまま。

今さっき聞こえたのがバイト先の店長の声なのは、気のせいだと思いながら……

実家に帰るからって1週間休みとったのはマズかったかにゃあ?

明日に向かって走り去れ、俺。もう帰ってこなくていいから。

知ってました?

「明日」って明るい日と書くんですよ?

「明」は日と月と書いて「明」なんですよ?

もう自分でもなに言ってるのか分かってませんよ?

いよいよ明日は合宿当日です。

※第五話「意外な被害者」へ続く

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