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小噺

桜島ザンギエフ伝説(3)

桜島ザンギエフ伝説 小噺

そんな訳で、合宿に備えて買い出しに繁華街へ出かけました。

いでたちは相変わらず、アロハ、サンダル、グラサン、モヒカン、というこれ以上無いくらいだらしない格好。おまけに髭を伸ばしているので、いつ警官に職務質問されてもしょうがないです。

「まるで沖縄のヤクサみたいだね」とおそえがわが澄ました顔で言います。この時はまだ、数年後に免許証の写真を見られて臓器売買しているフィリピンマフィアみたいだねと言われる事を知らなかったので、この程度で「酷い事いうよな、ぷんぷん!」とか思ってました。

さて皆さんは、どうして俺がサングラスをしていたか分かりますか? 

眩しいからじゃ?

何も考えてなかったんじゃ?

ヤクザだから?

そんな風に思ったんじゃないでしょうか。でも実際は違います。視線を他人に悟られない為です。 

昨日のゲーセンでの周りの反応を垣間見て思いました。もっとじっくり見てみたいな、と。どうしてかと言うと

俺がそっちを向くと、みんな、何故か顔を背けたり、硬直したり、逃げ出したりするからです。

グラサン装備中なら、俺が顔はそのままにしてても、視線をそちらに向けていても分からないですよね。周りは俺を見世物にして楽しんでいるようですが、俺は俺でゆっくりと人間観察させていただきました。水族館の魚に覗かれている見物人、といったシチュエーションでしょうか。

言葉の魔術とか小声で言わないように。


それはそうと、グラサン装備に至ったのは学食での事件のおかげであります。

繁華街に行く前に学食に入って、俺はレジに背を向けて食事を獲っていたのですが、向かいの卑語くんらがしきりに笑ってやがります。

「どうした?」ときくと、

「振り向かずに後ろを見てみろよ」 と無茶な事を言います。

仕方ないのでフォークで反射させてみると、なんか大きく白い物が複数見えます。

「学食のおばちゃんがお前を指差しながら集まってるんだよ!」

すかさず振り向くと散りました、おばちゃんどもは。

その時思ったわけです、見ている事を悟られずに見れば良いのだ、と。


意気揚々と繁華街を歩く俺。

何故か離れて歩く卑語くんら。

俺が話し掛けてもこっちを見ずにモゴモゴ言うのは、俺とは他人だと思われたい心の現われですか?

仕方ないので、本格的に人間観察です。すると面白い事に、年代によって反応が大別できるような感触が得られました。

サラリーマンは目を決して合わさずに大まかによけます。

子供は恐いもの知らずなのか、じっと円らな瞳で見つめてこようとしますが、すかさずお母様に「見ちゃいけません!」と言われて俺から遠ざけられます。

若者はチラリ、チラリ、とこっちを一瞥しては目を逸らす、という一連の行動を繰り返します。

おばさん世代は真の恐い物知らずです。ジロジロ見てきます。そしてあらまあ、おやまあ、と隣の奥様方とボソボソ何か話し始めます。視線は俺に釘付けのままで。

子供は子供でも、バスの上から窓に顔を押し付けて俺を見下ろす連中は余裕そうです。

こちらの手が届かないと思って遠慮せずに見下ろしてきます。気分はバーチャル・サファリパークですか?

大まかにはこんな感じでしたが、卑語くんの報告によると、皆に共通点があるそうです。その共通点とは……

俺とすれ違った後に、必ず振り返る。

そう言われた俺としては、そのまま行く振りをして、急に振り向いてみました。

早速一人のサラリーマンを一本釣り。

目が合った瞬間、遁走されました。

すれ違ったら安心と思う方が悪い。

※第四話「明日に向かって走れ!」へ続く

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