え、ニンテンドースイッチ持ってるのに、オクトパストラベラーまだやってない人がこの世にいるんですか?!(炎上マーケッティング)と言いたくなるくらい面白かったです。
FF4〜6が好きでスーファミ時代を楽しんだ大人達への素晴らしい贈り物だと思いました。古き良きスクウェアRPGがサクサク遊べて今風な味付けになって帰ってきた感じですね。今どきのゲームにありがちな不快要素を極力なくし、とにかく遊びやすいです。
特に欠点らしい点も見当たらず、ほぼ文句はない出来です(とはいえ一箇所だけ気になるところがあるのも事実ですが、クリア後の隠し要素についてなので、あとでネタバレありの感想にて記載します)。気になるなら体験版を遊んでみてはいかがでしょうか。製品版にセーブデータ引き継ぎできるので、遊んでもムダにはならないですし。
本作のためにスイッチ本体買うのは……とためらっている人は、他のソフトも買えば問題ないですね! ゼルダとか面白いソフトが揃ってますよ!
一番わかりやすい特徴は、なんといってもドット絵とジオラマが融合したような、懐かしさと新しさの混じった映像表現でしょう。ロードも速くて操作感も良く、延々と操作できないムービーを見せつけられることもなく、とにかくテンポよく進められます。ゲームとしての面白さのどこを優先し、どこを切り捨てるか、という大胆な英断の結晶とも言えそうです。
ゲーム的にもコマンドRPGとしてかなり面白く、戦略性が高いです。雑魚戦であっても、ちゃんと効率考えて戦う必要があるのがいいですね。ただ「たたかう」連打だけだと敵が固くて大変なんですけれど、うまくシステムを理解して技などをうまく使っていくと楽になるあたり、考える必要が適度にあるので単調になりません。昔のRPGの雑魚戦が本当にキライだったんですけど、俺がキライなのは単調な戦闘だったのだと再認識した次第です。ボス戦もいろいろなことをしてきて、どの戦闘も面白かったですね。
難易度は高めでもシステム周りが快適だから、たとえ全滅してもやり直しがすぐにできるので、色々な組み合わせを試したりといった試行錯誤が楽しいです。最初から攻略サイト見ると作業になって面白くないと思うので、何も見ないで思うがままに行動していくのを推奨します。
かなり自由度が高いから、街に入ったら住人の個人情報を全部調べつくし、息をするように住人の持ち物を盗みまくり、試合と称して住人をボコボコにしてから出ていく、というルートレターのマックスさんやゼルブレのリンクも真っ青なハチャメチャなプレイも出来てしまいます。なんというサイコパストラベラー! どのキャラクタから始めるかといった要素もあるので、人によってプレイスタイルがだいぶ変わってくるのではないでしょうか。
8人のストーリーが別々に進行できるのもいいですね。一人で行き詰まっても、他のところに気軽に行ける点も本当に助かります。ファストトラベルで一度行った街には即座に移動できますし、ほんと快適ですね。むかしWiiのゼルダやってて、魚釣りのコツが分からずに一週間くらい手詰まりになって何も出来なかったことを思い出すと、こういう幅広さはありがたい限りです。
本作はフルボイスではないんですけれど、要所要所に一言だけボイスが入ることがあって、これが実にいい感じです。ちょっとした声だけで、その人物が信用できそうなのか、腹黒いのか、といった印象も与えてくれて、地味ながらも演技力が高いと感じました。海外だとどうなってるんでしょうね。
街の住民ひとりひとりにも存在感があるのが見事です。ただのしゃべる看板といったアイコン的なものではなく、そこに人が住んでいると感じさせるあたり、地味な作り込み作業の成果だと思います。こういうところをしっかりしてるので、世界観がより地に足の着いたものになるんだな、と。神は細部に宿る。
セリフなどもおかしく思うような点がまったくなく、シナリオ関連は驚愕の展開みたいなことはないものの、地味ながら大人向けで先を進めたくなる魅力があります。かなり力入ってると思ったら、TRPGを作ってるような渋い団体が担当されてたようで納得しました。今のようにゲーム性優先にするため、敢えて1年弱かけて作ったシナリオを捨てたというのも納得してしまう自由度の高さですね。
音楽もかなり良いですね。仕事しててもオクトパストラベラーのボス戦の曲がずっと頭の中で流れてるので、クリア前にサントラ買って、iPhoneに入れちゃいました。
といった感じに褒めちぎってますが、前述したとおり、クリア後の要素で一点だけ気になったところがあったのも事実です。それらについてはネタバレ感想で記載します。
自分の場合、色っぽそうというおっさんくさい理由でプリムロゼでスタートした結果、他キャラとの落差がいろいろと凄すぎました。他キャラもこんな不幸なのかと覚悟してたら、そこまでなかったのである意味引きが良かったかも。とはいえこの作品、絶対に子供向けとか考えてないですよね。矜持とか娼館とか劣情といった言葉がフリガナなしで普通に出てくる辺り、昔RPGやってた大人向けへのゲームだと思いました。そして、そこがいい。実にいい。
シナリオは全体的に驚愕の展開みたいなのは無かったですけれど、ちゃんと終盤になるにつれて話が盛り上がり、セリフひとつひとつが丁寧で短いながらも人物描写がうまく、物語の先を見たいと思わせてくれるものがありました。アメリカの小説はやたら描写が長くて細やかな表現であるもののテンポが悪いと感じるのですが、それと反して本作は短い言葉だけで効果的にキャラの表現がされていたと感じます。
特に印象に残っているものとしては、プリムロゼ編のラスボスあたりの演出でしょうか。「決意」という曲が、他のキャラだとイベントシーンで流れるのに、プリムロゼだけボス戦で流れたのは風情がありました。倒されたボスが命乞いをするわけでもなく、あの詩を口にしたあたりなど、狂おしくも純粋なものもあったのでは、と感じます。最後まで救いはないものの、プリムロゼの人としての力強さのためか、後味も悪くない終わり方だったのではないでしょうか。
オルベリク編のボスも強烈でしたね。揺動に対するダメ出しの「火をつける覚悟がないのがダメだ」という言葉一つで悍ましさを表現してるのが実にうまく、戦闘後に自らの剣で自害する辺りも、性格が滲み出ていたと思います。他にも盗賊編の老執事、薬師での苦い選択、赤目の禍々しさ、などなどどのストーリーも面白く進めました。
道中は思うがままに進んだので、たまに明らかに無理そうな高レベル地域に突入して、命からがら通り抜けたり、シナリオに直接関係ないボスに出会ってしまったり、と楽しかったですね。特に隠しジョブの試練ボスは、どれも強烈でした。うまい戦い方だと意外と低レベルでも勝てたり、逆にレベルだけ高くてもスキルをうまく割り当ててないと苦戦するあたり、試行錯誤する面白さが満載でしたね。隠しジョブを取ってから、新しいスキルを手にして、組み合わせ考えるのも楽しかったです。
全メンバーのシナリオをクリアする頃には、門や黄金郷といった言葉がちらほら出てきており、この先も何かありそうだな、という予兆があったのがよかったです。エクセルで各街の内容をメモしつつ、サブクエストを進めていき、少しずつ真相に迫ってきている感じがミステリー小説を読んでいるような趣がありました。
ここから本作に関する数少ない不満点について述べます。
すべての街に二回行って、色々な登場人物に話しかけたりしたものの、門への入り方が分からなかったので、これ以上悩んでてもどうかと思ってプレイが70時間超えたあたりで攻略サイトを見たんですが、ちょっと萎えました。てっきり門や黄金郷に関するサブクエストをクリアしたら手がかりが出てくると予想してたのに、一見そういうのと直接関わり合いがなさそうなサブクエストがきっかけになってたので、手がかりを集めていくって感じでなかったのが残念です。
しかも高レベル帯でもない街と街をつなぐ道筋に、キーとなる人物がノーヒントで配置されていて(しかも特定イベントをクリアしてないと出てこない)、推理とか推測なども関係なく、とにかく無作為にありとあらゆる道を再度通ってないと気づかないような内容だったので、攻略サイトで答えを見ても「そうだったのか!」という納得ではなく、「なんだそれ」という失望感が強かったです。
一番ひどいな、と思ったのは門の中でセーブが一切できず、8体のボスを倒さないと隠しボスに挑めず、死んでしまったらまた三十分くらいかけて8体のボスを倒さないといけない点ですね。しかも隠しボス前で初めてメンバーを2つに分ける指示が出てくるので、自分の場合は厳選したメンバー以外レベル上げてなかったため、8体のボスから倒したあとに絶対に勝てないと知らされたような形となり(レベル24のメンバーとか居たので)、この辺りも凶悪に感じました。
今までボスの手前では必ずセーブポイントを用意して、気軽に色々な戦法や組み合わせを試せたというのに、今までの快適度を完全に裏切った仕様ですね。最近のゲームの流行りなんでしょうか。3Dマリオなどでも難易度高くて中間地点などもない、悪ノリとしかいいようがないやたら長いコースがあったりして、可処分時間が少ない社会人には地獄みたいに感じたのを思い出しました。
本作では昔のゲームの良いところも復活させましたが、FF3の悪い意味で伝説となったラストダンジョンみたいなものまで復活する必要はなかったと思います。難しいのは別にいいんですが、めんどくさいのは普通のプレイヤーは嫌なんですけれど、そういう常識ともいえる一般感覚がゲーム開発者にわからないんでしょうか。
たまに思うんですが、頑張ったけど納期などで仕方なくこうなったというのならまだしも、ゲーム開発者が分かっててひどい仕様を押し付けてるとしか思えないような代物って、思いついた人間は退職すべきレベルだと思いますし、それを通した組織もペナルティ追うレベルだと思うんですけれど、いかがなものでしょうか。なんであそこまで高品質に作っておいて、隠しとはいえこんな酷いことするんでしょうか。まさか中古で売られないように延命のためこうしたのだったら、かなり失望します。
隠しボスの件さえなければ同じスタッフの次回作は絶対に買うレベルだったのに、この要素のせいで様子見すべきか悩むレベルで不信感を植え付けられました。遊び心と悪ノリは違うものですし、難易度の高さとめんどくささは違うものだと思います。このあたり、主犯をべろんべろんに酔わせて、なんでこんな事しでかしたのか、ここまでの良作に泥をぬったのか、問いただしたい気分です。
とまぁ文句は書きましたが、せっかくなのでメンバー全員をレベル70以上に鍛えて、二度目のチャレンジで隠しボスも無事撃破しました。2時間以上もかかるのはちょっと長すぎじゃないでしょうか。自分が撃破した時のパーティはこんな感じでした。
通常パーティ
・プリムロゼ(盗賊)→味方の強化と敵の弱体化
・オルベルク(武芸家)→武芸家の奥義を乱れ打ち
・サイラス(魔術師)→大魔術の乱れ打ち
・トレサ(神官)→BP回復、体力回復
隠しボス第一パーティ
・プリムロゼ(魔術師)→同時撃破が必要なので、ブレイク要因。たまに杖で殴る。
・ハンイット(戦士)→鍛えてなくて、ブレイク用のみ。たまに戦士の奥義。
・アーフェン(商人)→BP回復、アイテム使用
・オフィーリア(ルーンマスター)→体力回復、神官奥義で魔術師に連発させ、ルーンマスター奥義でメインアタッカー、となかなか忙しい
隠しボス第ニパーティ
・サイラス(星詠人)→正直この組み合わせは失敗したかも。踊り子あれば組み合わせて強かった気もしたんですが……
・オルベルク(武芸家)→武芸家の奥義でメインアタッカー
・テリオン(薬師)→物理防御低下、アイテム使用
・トレサ(神官)→BP回復、体力回復
自分はこんな組み合わせでしたが、クリア後に見た幾つかの攻略サイトでの組み合わせ例とまた違っていて、このあたりの試行錯誤できる余地が本作の魅力だと再認識しました。それだけに8体のボスを倒さないといけない仕様は理解に苦しみます。あれさえなければ最高だったんですが……
とはいえ、このサブストーリーの名前が「旅の果て」で、裏ボスを倒したあとも淡々としているあたり、不思議な趣があったのも事実です。いいゲームだと世界にのめり込み、終わってしまうと寂しくなる、あの感じです。ああ、終わってしまったんだな、という静かな感慨深さがあり、なんだかんだでいいゲームだったと思いました。
一点だけ気になる点はあるものの、全体的には圧倒的な品質の高さで、とにかく遊んでていて面白い作品でした。派手なムービーだけ見てるような中身がスカスカなものではなく、古き良きゲームを現代的に昇華させた作品だと思います。できるだけ攻略サイトは見ないで、自分なりのプレイを楽しんで頂ければ、と思います。
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