新海誠監督のファンなら、黙って見に行けば問題なし。そうでなくても、予告編の最初の25秒を見て映像美の虜になったのなら、黙って見に行けば問題なし(なんといっても、映画の日でなくても常に千円ですし)。
ストーリー的に意外な展開があるとかいうわけではないのですが、予告編では割と終盤の見所もカットインされているから、予告編すらほとんど見ないで鑑賞したほうが、作中で心を揺さぶられる機会が増えるでしょう。
6月1日の土曜日、おりしも福岡市では雨が降る中、天神で鑑賞してきました。他の地方の方には無関係な話題ではありますが、最初は天神東宝の本館ビルに行って、実は場所が違ってて大慌てでした。実際はソラリアプラザ7階での上映になるので、チケットをネット予約した人は注意した方がいいかもしれません。
前日の5月31日が初回上映で、その翌日に見に行ったわけですが、すでにパンフやDVD、ブルーレイ類が全滅してました。自分は初日上演に行かないにわかファンである事、そして、訓練されたファンの熱意の底知れなさを思い知らされた次第です。
とはいえ、公開して一ヶ月もしないうちからディスク類は発売されますし、iTunesではダウンロード販売もされているので、劇場でなくて自宅でゆっくりと見るという選択肢もとれるのはいい事です。大胆不敵な戦略ですが、それだけ映像美に自信があるのでしょうね。実際自分も劇場で見たというのに、珍しくブルーレイ版を買ってしまおうかと思ってしまうくらいですから。
いつもの映画泥棒のアナウンスでテンションを若干落としつつも、逆に言えば浮ついた気分をリセットされつつ本編の上映が始まり……と思ったら、なんか期待してたのと違う雰囲気の映像が始まってオロオロしてしまいました。なんかエヴァQの冒頭で思わず周りを見渡してしまった知人の談を思い出します。え、俺、違う映画見に来てる……?
これはこれで綺麗なアニメなんだけど、雨がぜんぜん降る気配がないし、どうなってんだろう、と思ってたら以前監督が別件で作られたアニメ短編『だれかのまなざし』が上映していたのでした。この短編が終わってロゴが消えた瞬間、のことは今でも鮮烈に思い出します。見た途端、映像の密度の違いを感じ、息をのみ、「ああ、ついに本編が始まったのだな」とすぐに直感で理解するなんて、こんな経験は稀有でしょう。
その後は全編にわたって、息をのむほどに、ただひたすら、繊細で、美しいシーンが続きます。ありとあらゆるシーンが丁寧に描かれていて、駅の券売機にお金を入れる部分であっても美しいとは、ただ事ではありません。本編は50分程度と短めですが、とにかく手間隙をかけた濃厚な作品の密度を感じます。
全編ほとんど雨が降っているのですが、監督が「第三の主人公」とまで表現しているのに納得しました。冷静に考えれば、空から水が降ってきているだけなのに、描写のすばらしさと相まって、作中にかなりの存在感があります。
なお、これ以降はストーリー内容に若干ふれた記載になります。秒速5センチメートル(感想)』の内容にも触れており、両作品を鑑賞された方向けの内容となっています。納得した上でクリックして読み進められてください。
鑑賞後は雨の中、自転車で帰宅したのですが、いつもは鬱陶しいだけと思っていた雨だというのに、雨を見ていると作品のことを思い出していて、「雨もそんなに悪いものでもないかな」と思うようになっていました。
もし機会があるのなら、できれば雨の日に鑑賞してみてください。おりしもこれから梅雨ですし。
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