イラン革命で隠れ家に潜伏している6名を助け出すため、彼らを偽映画のクルーとして扱って国外脱出させる、というストーリーだけ聞くとコメディ映画かと誤解する人もいそうですが……事実は小説よりも奇なり、この言葉をこれほどにまで体現した作品も珍しいと思います。
史実を元にした物語なので、おのずと結末は知った状態で鑑賞し始めたのですが、作品世界のディテールに妥協がなく、危機感を煽る演出が見事であるため、最後の最後まで緊張感を保ったまま見れて良かったです。
当時のイランを知っている身ではないのにとてもリアルに感じられたと思ってましたが、DVDのメイキングを見たら納得しました。こんな映画なのでイランでは流石に撮影してないとは思いましたが、ここまで徹底して撮影しているとは驚きです。
イランと言えば、本作を親米映画と見る向きもあるようです。確かに冒頭の歴史的流れは最低限紹介されて、物語を理解するのには十分ではありますが、あれだけを見てもイラン大使館を占拠するという褒められはしない暴動が起こるほどになったのは何故なのか、といったイラン側の事情は見えないとは思います。とはいえ、あくまでアメリカ側からの視点にたっての映画なので、これはこれで仕方ないのかな、と。
派手なアクションなどは無いものの、地味に緊張感が続く作品ではありましたが、個人的に一番恐ろしかったのは潜伏者を探すために子供が利用されていたシーンですね。子供はその意味も知らず、純粋に指示されたとおりに作業しているだけとはいえ、そうなってしまう社会的構造といったものが何よりもおぞましい。
下手なアクション映画よりもハラハラできる良作だと思います。
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