聯愁殺

聯愁殺 (中公文庫)

西澤保彦
中央公論新社
2010-09-22

連続殺人事件の唯一の生存者の前で、推理合戦が行われるという趣向の、ロジック重視な作りのミステリーです。
登場人物が奇名珍名だらけなのが不可思議でした。特にそうしないといけないという理由もなく、現実世界と切り離された感を出すにしても効果的と思えず、タイトルの禍々しさにあわせた趣向なのかな、という気もしないのですが、正直読みづらさが増えたというデメリットを解消するほどではなかった気がします。
推理合戦自体は、限られた情報の中でいろいろ思いつくものだなぁ、と感心するものの、基本的に平板で盛り上がりには欠けます。しかも後から明かされてない事実が次々出てくるのはどうかな、と感じました。まぁこの事実があったら推理パターンが減るとか、少しでも展開に起伏を出したいとか、そういった事情からこうされたのかなぁとは思います。
と文句は書いたものの、個人的には面白かったです。退屈に思えた推理合戦の中にも、しっかりと伏線は用意されていましたし、最後の展開もなかなかでした。とはいえ、ネタばれになるので詳細は言えませんが、人を選ぶ展開かとも感じられました。自分はこの手のは読み慣れてるので大丈夫でしたが。
西澤氏の諸作の中ではトンデモ系や奇想系ではなく、現実寄りの作品なので大人めな印象は受けましたが、個人的にはかなり楽しめました。最近は西澤氏の作品を手にしてなかったので、他の作品も読んでみようかな、というきっかけになってくれたので、そういう意味でも期待通りと言える作品だったかと思います。