アジアの西の果て、白い荒野に立つ矩形の建物。いったん中に入ると、戻ってこない人間が数多くいると伝えられている。その「人間消失のルール」とは?謎を解き明かすためにやってきた4人の男たちは、果たして真相を掴むことができるのか?異国の迷宮を舞台に描かれる、幻想的な長編ミステリー。
恩田氏は相変わらず幻想的で魅力的な舞台を作るのがうまいなぁ、と感心しました。彼女にかかればただの廃墟ですら魅惑的に思えてくるというのに、それが人間消失という謎までからんでくるとあっては、もう読まずにはおれない。
……と、途中までは思っていたんですよ。人間消失に隠されたルールに関して推論をしたり、その実証のために中に踏み込もうとしたり、という過程的な部分の面白さは相当なものでした。
しかしそれが後半になり真相が明らかになってくると、今までの神秘的で幻想的な佇まいが崩れていってしまいます。いちおうラストでは幻想的な予測を孕んだ感じに終わるのではありますが、なんかもう後半にいく前に今までの推論が覆されて絶望的な状況になってルールが謎のまま終わる、って感じでも個人的には良かった気がします。難しいところですね。
そういう理由で誰にでも手放しで勧めるわけにはいかないのですが、装丁の美しさと前半部分の面白さはかなりのものなので、興味のある方は手に取られてもいいかと思います。
コメント