扉は閉ざされたまま

石持浅海
祥伝社
2008-02-20

刑事コロンボや古畑任三郎といった「倒叙」ミステリーです。つまり、はじめから犯人と犯行方法が分かっているパターンの作品です。
普通のミステリーだと犯人や犯行方法が気になって先を読ませるようにするものですから、逆に倒叙ものだとよほどの力量が無いと先を読ませるのは難しいと思います。それだけに、推理合戦メインで、ドラマチックな展開があるわけでもないのに、テンポよく読ませてくれる、という点はよく出来ているんじゃないかと感じました。
普通の倒叙ものだと事件現場に入って、いろいろな情報から推理を進めたりするものですが、本作は少し変わった趣向が凝らされていて、それがよいスパイスとなって最初から最後まで緊張感を保ったまま、読み手を退屈させない素晴らしい内容に仕上がっています。
結末の畳み方も含め、ありそうで無かったタイプの密室ミステリーと思います。