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小説

夢違

夢違 (角川文庫)

夢違 (角川文庫)

恩田 陸
KADOKAWA / 角川書店
2014-02-25

詳しいSF的描写のようなものはなく、いつもの恩田節とでも言いたくなるような、独特の雰囲気を持ったストーリーテリングで引き込まれていったので、最初は近未来の話だとは気付きませんでした。
ふつうに読んでいるだけだと現代の日本と同じような雰囲気なんですが、そんな中にさり気なく聞きなれない単語が挿入されるのです。それに対して説明的なセリフを入れるわけでもなく、スムーズに話が進んでいくのが妙味ですね。夢を可視データ化することを「夢札を引く」と表現するセンスがすばらしい。
夢というものの不可思議さが絶妙で、スプラッターホラーみたいな直接的な恐怖ではなく、奇妙な雰囲気を淡々と描写しているのが印象に残りました。中でも作中で問題になる夢の異様さはかなりのインパクトでした。
また、作中で重要な意味をもつクラシックの名曲が、世界観をさらに怪しく彩ってくれますので、これらの音楽をエンドレスにかけながらの読書を推奨いたします。



とはいえ、ある意味いつもの恩田作品であり、全ての事象がスパッと解決されて終わるわけではないので、人によっては不完全燃焼と感じられてしまうかもしれません。しかし、この雰囲気を取り敢えずファン以外の方にも味わってもらいたいな、と思うのです。

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