呪力が存在している千年後の日本を舞台にしており、独自の習慣や生物がいろいろ登場してきます。序盤はそれらの説明などを踏まえて進むため、比較的スローペースかもしれませんが、個人的にはその独自性がユニークで退屈とは感じませんでした。逆に言えばここで丹念に世界観を表現しているから、作品にのめりこみ易いとも言えるかと思います。
ジャンルとしてはミステリーではなく、冒険小説でいいんでしょうか。もっと言ってしまえばSFなんですね。もっと言えば、とても良くできたディストピアSFです。呪力の存在ひとつで、ここまで社会が歪んでしまうのか、という有様をまざまざと見せつけられます。
けれど、最近はSFって名前をつけると敬遠されるから、SFという宣伝文句は使われないみたいですね(第29回日本SF大賞を受賞しているのはウリにならない世の中なのかな)。でもまぁそんな瑣末な事を気にせずに、とりあえず手にしてみたほうが損しないと思います。読みやすくて、面白いから!
とにかく圧巻。渾身の一作でしょう。けっこう血なまぐさい内容なので誰にでもオススメとは言いがたいんですが、このクオリティの高さを見逃したままなのはもったいないと思います。
鈍器になりそうな分厚さではありますが、かなりの面白さのあまり、出張中だと言うのに途中から一気に読んでしまいました。これはまとまって時間がある時に読み始めた方がいいでしょう。
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