初任給。それは一生に一度のモノ。2度貰いたくはないですけど。今現在三度貰うような状況になってますけど。やっぱ基本的には一生に一度ですから、最初は使い道を考えるってもんです。
俺の使い道? 『里見の謎』の新品。もちろん、おすすめシール付)を買おうかな俺はもちろんまみりんにプレゼントを購入しようと脅され思いました。当時は東京で研修中のため遠距離恋愛だったので、俺のセンスで物を贈って失敗するのも嫌だったし質問してみました。
「えっとね、わたし、早起きしたいんだけど」
はあ。目覚まし時計が欲しいのですか。
「テレビで見たんだけど、パッパラパッパーの時計が大人気なんだって!」
はあ。それはパラッパラッパーの事ですか。
「わたしも博多で探してみたんだけど、どっこにもおいてないの。東京には売ってるんじゃない?」
はあ。売ってたらいいねぇ。
当時、片道二時間以上の新人研修。夕方5時半に終えて急いで帰っても8時過ぎ、といった通勤状況。知ってます? 時計屋さんって8時には閉まってしまうんですよ?
仕方が無いのでギリギリ閉店間際に秋葉原によって、限られた時間で色々なお店を見てまわりましたとも。何件も、何件も。
そしてようやく発見。ゴールデンウィークには博多に行く予定でしたが、一足先にパラッパ時計を送りました。めでたし、めでたし。
博多で休日を謳歌する二人は街に出てのんびりとデパートなんぞを見歩いていました。すると突然まみりんが……
「あ、何、あれ?! ほら!!」
そちらを見やると展示品のダブルベッドが。なんの変哲も無いベッドです。……だから?と思って何となく反対側を見ようとすると、首根っこを掴まれてしまいました。
「何でもないの!」
いや、俺、まだ何も言ってませんが。当然怪しむ俺。当然反対側を見ようとする俺。
「愛してるんなら見ちゃ駄目!!」
自分の揺るぎ無い愛を確信している俺は、迷わずにそちらを見ました。すると……
おや? 見覚えのあるようなオレンジ色の帽子が……
「いいから早く、早くってば!」
笑顔がステキに引き攣ってるまみりん、にっこりと極上の笑みを返す俺。幸せな笑顔に包まれた二人は次のデパートへと何故か早足で向かいます。すると……
おや? 見覚えのある黒いお耳が……
「もうデパートはいいから、地下街を歩こうよ!」
反対する理由はありません。ありませんとも。すると……
遠方に未確認物体(オレンジ色に発光)が……
「あ、キャナルシティって知ってる? すっごいんだよ!」
何だか良く分からないんだけど、とにかく凄いんだね。キャナルシティに着いてからは何故か時計屋をひたすらに避けているような気がしますが気のせいでしょう。ねえ、まみりん?
すると出会いは突然に。時計屋ではなく、キャラクターグッズ売り場で突然に。
言い訳のしようが無いくらいの至近距離。
「あの時は、あの時は……博多にはどこにも無かったんだよ!」
俺は何もきいてませんよ、まみりん?
「愛してる?」
小首を傾げて聞いてくるまみりん。もし君に尻尾があったら必死に揺られていただろうね、餌を欲しがる小犬みたいに。
もちろん愛してるよ、まみりん。
この原稿を書いている後ろでまみりんが一言。
「え? あれ、初任給だったっけ?」
もちろん愛してるよ、まみりん。
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