事件シリーズの第4弾ということで、ファンの方ならすぐに手を出してるのではないでしょうか。逆に言えばシリーズ未体験の方は『殺竜事件』から順序良く読んでおいた方がより楽しめるんじゃないかと思います。独立して読めなくもないですが、本作に関してはシリーズものとして読んでおかないと魅力が少ないかもしれません。
連作短編集のような構図にはなっていますが、今回は少しミステリー色というか推理色が少なめになっている気がしました。その分キャラクターや事件性などで読ませる方向になってるかな、と。世界観を楽しもう、という感じですね。
個人的には本編そのものよりも印象深い部分がありました。作中では割とアルファベットが書かれていたり、地の文では和風英語で表現がなされていたりするのですが*1、十字架についてだけは注意深く扱われていて、これはこの世界には認識されていない事物だ、と説明がありました。
あくまでキリスト教という現代社会の中だけに存在するものの象徴であるから、この世界観の中で普通に扱うと台無し、ってことなんでしょう。似たような件で言えば、『ベルセルク』の背景スタッフの方が十字架を書き込んでしまっていて作者の方に注意を受けた、ということを思い出しました。現代社会ではない舞台だといろいろと注意すべきことがあるな、と感じます。
- 注1 : 彼らの話しているファンタジー言語を我々の日本語に訳したものが本書だ、と捉えれば問題ないわけですし、そもそも彼らが本当に日本語を話してる可能性もあるわけなので、あまりこの点について深く追求する意味は無いかな、とは思ってます。
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