「半年後くらいに結納でもしようか」って両親が言ってた気はしますが「どうせネタだろ」と思ってました。しかしなんか加速的に話が当事者から離れた所で進んでいたのでした。
大体、婚約指輪はおろか結納金の費用なんざありません。次の給料日まで今日という日をを生き抜く事しか考えておりませぬ。「払えるだけでいいから」って言われても、払えないものは払えません。
気が付いたら五日後に結納が迫ってきました。それまでにお金を工面しないと!
……結納金ってローンできるかな?
……腎臓と肝臓、一つでも大丈夫だったのはドッチだったっけ?
一時はどうなるかと思いましたが、直腸売ったり盲腸売ったり脱腸売ったりして何とか結納金を準備できました。父さん母さん、すみません。
取り敢えずまみりんの為に婚約指輪を買いに行きました親の金で。まみりんは「ダーリンが自分のお金で買ってくれないと何かヤだ〜!」とかゴネてたんですが、母さんが「まみさん、このくらいまでなら出せるから」と指を数本立てた瞬間、ショーケースの合間を飛び回り始め、何個か候補を絞り上げて並べました。
どれにするのかなあ、とか思ってたら予算ギリギリの奴を掴み取りました。俺の予想通りに。
「輝きが他のとは違ってたんだってば!」
別に一言も責めてませんてば。少しは遠慮すれば?とか別に言ってませんてば。
で、久しぶりにまみりんのお義父さんとお会いしました。以前から漠然と凄い人だと思ってはいました。まみりんと同棲する為に3月に一度お会いしてたんですが、その時の場所が一人2万円する料亭。お義父さんが6人分全部出してくれたんですけど。
あのあとは超高級肉料理店にいって、お義父さんがレジの所で店員さんに「この豚肉、ちょっと味がおかしくないかい? 君の舌がおかしいんじゃないかい?」と真顔で凄んでたのを思い出します。ちなみにその豚肉、嶽花家は全員おいしいおいしいと言って召し上がってたんですけど。
で、今回の結納の場所とかもお義父さんが用意してくれました。なんか鹿児島の昔の屋敷っつーか、なんかとにかく高級そうなとこ。でも前回の事があるんで、俺は割と冷静にしてました。そして結納が始まって、結納に指輪を送ったら、なんか結納返しとか言ってアチラから時計をくれるって事らしいのです。
「結納返しには腕時計でどうでしょうか」とお義父さん。
「地方によって違うらしいですけど、鹿児島では時計みたいですし、いいのでは」と俺ら。
「じゃあロレックスでいいですね」
「ええ?!」
「んー、200万円くらいのでいいですか?」
「ひええええ! そんな高価なものは頂けません! もうちょっと手ごろなもので……」
「じゃあ30万のロレックスにしましょう」
お義父さんの左手には時間のところにダイヤモンドがついてて金ピカの675万円のロレックスが光っていました。しかも今日の為に地味なのを付けてきたそうで。それでも俺にはまぶしすぎです、お義父さん。
そういうわけでロレックスが俺の左手に常にはめられているのでした。ちなみにまみりんは「ゴツイからヤだ」といってつけてないので、とっくの昔に動きが止まってます。格の違いを見せつけられたような気分です。
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