かなり重く、救いが少ない話です。派手さはなく、押さえ気味の演出、渋い静かな音楽、そして役者の迫真の演技が見ものでしょう。ただし、あまり声を大にしてお勧めしにくいです。
構成が複雑すぎると言うか、散漫と言うか、過去・現在・未来がはっきり分からず、突然他のシーンに切り替わるため、前半はさっぱり意味が分かりませんでした。意味ありげなシーンを冒頭に持ってくるのは興味をそそられるかもしれませんが、そういうのは最初のシーンだけにして、あとは主要人物3人のシーンを次々と時間軸にそって展開させていって、役者の芝居に集中させてくれても良かったんじゃないかと。
この作品を見ていると『メメント』がいかに優れた構成だったか思い知らされます。と言うかこういう話なら、別にこんな凝った(と言うには抵抗がありますが)構成にする必要性が見受けられません。ミスリーディングを狙ったというわけでも特にないし。むしろそのせいで人物の心理描写がおろそかになっているのではないかとも思えました。心臓を提供された人物が最後どうしてああまでしたのか、といったところの説得力が欠けていたと思います。心臓を移植されると前の持ち主の嗜好などに似てくる、とかそういう逸話をまぜるだけでも印象が変わったのでは。
とは言え、やはり演技力は見ものでして、特にベニチオ・デル・トロが本作でも存在感の強い熱演で素晴らしかったです。はっきり言って彼を見に行ったようなものなので、そういう意味では十分元を取れた気がします。
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