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漫画

えれほん

えれほん 漫画

はじめに

うめざわしゅん氏の作品はどれも面白くて素晴らしかったのですが、それらの作品すら凌駕する、とんでもない最高傑作が生まれ出てしまったのではないでしょうか。

表紙から想像もできないくらいハードな話がそろってて、今年の日本SF大賞になるんじゃないかというレベルの思考実験と、娯楽作品としての完成度が両立していて、近年稀に見る衝撃でした。なお表紙みたいな萌えイラストはほぼ出てきませんので、そういうのが苦手な人でも大丈夫です。

三種類(+α)のディストピアを扱った中編で構成されており、二作目の『かいぞくたちのいるところ』はとある理由につき自由に読めるようになっていますので、まずはこちらを読んでみて感銘をうけたら、ぜひ単行本を購入してみましょう。

以下にネタバレにならない程度に、一話ずつ概要を紹介していきます。

第一部:善き人のためのクシーノ

善き人のためのクシーノ

妹主義(シスタリズム)という政策のもと、リア充が徹底的に排除され、BBQをやるだけで極刑を受けるような世界の話。

この画像のシーンは最初見たときは「うわぁ……」と思ったのですが、読み終えたあとにもう一度見て「うわぁ……」と違う意味で思ってしまいました。

一見ギャグのような世界観ですが、徹底した言葉遊びと残酷さの入り混じった、とてつもない衝撃作です。

第ニ部:かいぞくたちのいるところ

かいぞくたちのいるところ

この画像には、実は犯罪行為が含まれています。

何もかもが知的財産(IP)登録されてしまい、許可なく使うと収容所へ送られてしまうような世界では、画像の右側の方が犯罪者となってしまうのです。

この体制に逆らう「海賊」と呼ばれる組織に中心人物こと「先生」の人物造形が実に素晴らしく深みがあり、劇中ラストの言葉の締めくくりといい、実に見事な読み応えでした。とても中編とは思えないくらいの重厚さがあります。

第三部:もう人間

もう人間

母親から常にチューブで供給を受けないと生きていけない「永遠の胎児」ともいえる存在がいる世界の話。

堕胎は殺人なのか、どこからが人間なのか、人間とは何か、といったテーマが様々な観点から論じられた先の、鮮烈な締めくくり方が印象に残りました。

最後に

コミックス版には、更に一話おまけがついているのですが、それについては画像すら貼らず、紹介もしないでおきます。

これも凄かったので、ぜひご自身の目で確かめてください。

読み終えたあと、自室で遊んでる息子の姿をみて「ああ、日常に戻ってきたんだな……」と安堵してしまうくらい、世界観に没入して読みふけってしまいました。

とはいえ非現実的というわけでもなく、下手すると本当にこんないびつな社会になってしまいかねない、と思えるほどの一つの可能性を提示していると感じました。

「nowhere」を逆にして「えれほん」ということみたいですけど、no で区切るか、now で区切るかで意味がだいぶ違ってくるあたりまで含め、考えつくされた問題作だと思います。マンガ読みなら必読でしょう。

「今年はこれを超えるマンガが味わえるのだろうか」と思ってしまったくらいの強烈さを、ぜひ自分の目で確かめてみてください。

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