漫画

国民クイズ

欲したまえ、さすればかなえられん。司会のK井K一が叫ぶ中、クイズ参加者は負けじと思いのたけを叫ぶ。
「志望大学に合格できますように!」
「とりあえず100億円」
「女房と別れて愛人と暮らせますように」
「日本でも市民が拳銃を持てるようにしてください」
「やせたい! やせたいのっ!」
「お隣の奥さんを殺してください」
「タイガーズは9アウト交代にしてくれ」
「息子をいじめた連中の公開処刑を望みます」
「外国産ワインの輸入を禁止してほしい」
「うちのギルがいなくなっちゃったんです。探してください……」
「いつになったら九州新幹線はできるんだ?」
「アダルトビデオのモザイクを消せ!」
「エッフェル塔がほしい」
あまたの欲望が溢れ返る中、僕の欲することは。
「廃刊になった国民クイズを復刻してほしい!!」
太田出版がかなえてくれました。

国民クイズ  上

国民クイズ 上

杉元伶一,加藤伸吉
太田出版
2013-11-01

国民クイズ 下

国民クイズ 下

杉元 伶一,加藤 伸吉
太田出版
2013-11-01

だからこそ今、あらためて紹介しましょう。この本は読む人間を選びます。だからその前に、僕が貴方を選ぶ事にしましょう。
貴方は、以下のようなCMが流れるNHKがあったとしたら、毎日この番組を見ますか?見れないと思ったら、引き返しましょう。
ファンファーレと共に、回るルーレットに矢が放たれる。矢は「2」の所に刺さった。それを見て司会者は言う。「今年の年金の支給者は、年金番号の末尾が2の方で〜す!」
ほう、ここまで読んでいるとは貴方もなかなかですね。しかし、あともう一つだけ。六面ダイスを振って下さい。貴方の頭の中で。幾つですか?
0なら合格です。先に進んで下さい。そうでない貴方は残念ですが牢獄行きです。
漫画の歴史に残る(もちろん裏の)、世紀の怪作といえるでしょう。
近未来の日本。資本主義は崩れ、どん底と化していた。その日本を救った政治体制、それが、”国民クイズ”体制である。人々の行き着く当てのない欲望を操る為に考案、実施されている非常にヤバく、異様な人気の国営テレビ番組。なにせ、クイズに合格すれば、文字どおり何でも願いがかなう。大勢の人間が毎晩出場する。そして脱落し、戦犯扱いされ、財産を没収されてゆく。しかし出場者は減らない。決して。その司会を務める「K井K一」という国民的なカリスマを持つ男。百人の政治家以上に国を動かす力を有する彼をめぐり、様々な権力や思惑が絡み合い、日本の未来が暴走して行く……
このストーリー要約を読む限りでは、かなり目茶苦茶な代物と思われる人が多いでしょう。ある意味、そうです。目茶苦茶で破天荒。しかし今の漫画が失いつつあるパワーが、ここにあります。異様なまでの熱狂が、ここにあります。一見バカバカしい設定の裏には、まれにみる完成度の高さが土台となり、希有なブラックジョークとして、この作品を成立させています。 
表紙の絵でひく人もおられるでしょう。しかし、この独特の絵が、作品に非常に調和しています。話ごとの表紙も世界的に有名な絵画のパロディや示唆に満ちたものばかりで、絵的な演出的の魅力にも溢れています。原作が持つブラックなパワーを、見事に開放しているのではないでしょうか。
それでも躊躇している貴方へ。
自信を持って言えます。こんな凄い漫画を見逃しているのは、もったいない。
せっかく人間として生まれたんです。恐怖やブラックジョークを娯楽と楽しめる、貴重な存在ですよ? しかも、日本人に、ですよ?
日本語を読める幸せというものを、僕はこの作品を読んで感じます。
そんな歪んだ幸せを、貴方にも。

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