映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』公式サイト
最近は映画館に行ってないなぁ。正月明けは妻と息子が帰省して一人だよなぁ。たまには知人を誘って一緒に映画館に行ってみるかなぁ。といった心境で、新年初めての映画として本作を映画館で鑑賞してきました。
率直に書くと、自分が望んでいた方向性ではなかったなーと思いました。残念ながら前作は超えられなかったな、と。知人が気に入ってたら悪いので静かにしてたんですが、そろそろ書いてもいいかなーという気もしてきたので、自分の気持の整理のためにもブログに書いておくことにしました。
自分的には合わなかったんですが、世間ではかなりウケてるように感じられます。見て損したというわけでもなく、それなりに楽しめはしましたし、むしろお金がかかってて贅沢な作りになってると思いはします。4DXで鑑賞したら楽しめそうな場面も多々有りましたし。
隣の席でポップコーン食べてる人が居たものの、音量大きいシーンだけ食べるといった気遣いもありそこまで不快でなかったので、今までみたいにポップコーン食べてる人間は全員死刑と思ってた感情が少し和らいだのも収穫とも言えますし、知人と映画を見るという体験的には悪くなかった気はしてます。この映画のどのあたりを楽しみにしていたかによって、心境が結構違ってくるのではないでしょうか。
ここからネタバレ感想になるので、鑑賞後の閲覧を推奨します。
自分が気になった点を書き連ねてみます。
序盤のアクションシーンがいきなりハイテンションだったんですけれど、個人的には序盤が一番おもしろくて、次第にテンションが低くなっていきました。普通の脳筋アクション映画なら別に問題ないと思うんですけれど、これはあの傑作『キングスマン』の続編であるため、相当自分の中のハードルが高くなってました。
序盤のミンチあたりは狂ってるなーと思ったんですが、前作に比べると悪役の魅力がイマイチに思えました。悪のカリスマ・狂気性が足りない気がします。印象に残る個性的なセリフが無かったのもあって、物語が引き立たなかった気がします。女優さんの責任ではないとは思いますが、キャラの立たせ方ってほんと難しいですね。
元々は4時間近くあった内容を2時間強におさめた弊害なのか、けっこうシナリオが雑に思えました。尺が足りなくて取り急ぎ描写した点などものかもしれませんが、前作の登場人物をほぼ全滅させたりしちゃうのがどうしても俳優さん達の都合がつかないから続編作りやすいように現場の都合でリセットした感が強いんですよね。全滅の経緯も敵が強大だったとかいう描写もなくあっさりしたものだったので、キングスマンという組織が大したことなさそうに感じられるのもマイナスでしょうか。
前作での試練の際に殺せなかった愛犬もあっさり死んで、彼女があっさり代わりの犬を連れてくるので、もう少しそこに至るまでの葛藤とかを省かずに描写してたら、印象もだいぶ変わると思うんですよね。本作の主人公は麻薬使用者である彼女への個人的想いで動いちゃうんですけれど、そこは代わりの彼女を連れてこないんだ、と思っちゃいました(まぁそれやると本格的に話が破綻しますし)。まぁ冒頭で汚れた主人公に迷わずキスしようとしたシーンで愛情を表現してたと言えなくもないですけど。お尻がそこまで良かったかと邪推したわけではけっして
日本とアメリカでは事情が違うのかもしれませんが、麻薬使用者を切り捨てる大統領が完全悪の扱いされてたのも違和感ありました。まぁ現実的には麻薬施用者を全員見捨てるのはムリだとは思うんですが、今後の麻薬使用を戸惑わせて麻薬中毒を世界から無くすという大きな視点で考えると、冷酷すぎるとはいえ高度な政治的判断と言えなくもないので、もう少し大統領の扱いもどうにかしてやれた気がしました。とはいえ自分が麻薬使用者だったら「なんて非道な決断を! こんな悪いやつは死んでしまえ!」と思ってたかもしれませんが……
前作へのオマージュは色々あって、続編として頑張ってる気はするんですけど、細部で台無しな気がしました。特に(悪い意味で)印象に残ったのは、地雷を踏んで歌ってるシーンです。無理やり感動的なシーンにしようとしてますけど、そのあとに二人で正面突破してるから犬死でしかないじゃないですか。仕方なく正面突破したという描写もないから、逆に高度なブラックジョークにも思えました。でもまぁミンチにでもされない限り、スパイひみつ道具で生き返るんでしょ?
生き返るといえば、前作の師匠があんな方法で生き返ったのが物語的にどうなんでしょ。百歩譲って生き返るのを是として、道具さえあれば誰でも可能って時点でどうなのかと。師匠だけが可能だった方法での唯一の復活ならまだしも、かなりお手軽感が否めないため、もう誰が死んでもミンチにでもされない限りは、生き返りそうな雰囲気じゃないですか。万能感ありすぎて、この世界において緊張感が得られるんでしょうか。
師匠が前作で死ぬシーンは、敵のボス役が「スパイ映画じゃ人が蘇るが、これは映画じゃない」みたいなセリフで師匠を射殺し、そのまま前作では出てこなかったので、青年の成長物語としての側面がより引き立てられてたと思うんですよ。そう考えると、今回の復活は前作の全否定になりませんか? あんだけ前作へのオマージュ散りばめてるのに、なんでこうしたんだろ……とはいえ、師匠が出てきて蝶の幻覚みたりするシーンとかはお気に入りなんですけどね。
他にお気に入りな点も述べておきます。エルトン・ジョン氏がロックだった点ですかね。もう、超ロック。生き様がロック。本人にそっくりだけど、怒られないのかなと思ってたら本人だったという。
あと味方が裏切る点の伏線を見逃したと思ってて、知人に「どこで師匠は気づいたんですかね?」と聞いたら「伏線なんて無かったでしょ」と言われてえーと思ってたら、ググってもみんな同意見だったのはなんか笑いました(←あまり映画の内容関係ない)。
あと女子高生二人組が仲良く見に来てて、映画終わって帰る時には表情が消えてたのが印象に残りました(←まったくもって映画の内容関係ない)。それはあたかも『ショーシャンクの空へ』の原作と同じだからという理由で『ミスト』を見に来ていたカップルを見ていたときのようなデジャブ。
続編としては規模が大きくなったものの、見た目的な部分ではなく本質的な部分で精神的続編じゃなくなったかもなぁ、という心境です。じゃあ前作はどのような点がよくて、今回何を望んでいたのか、を考えてみます。
自分が今回見たかったのは、キングスマンならではの、捻ったアクションシーンだったかと思います。酒場での優雅な格闘、教会での狂想曲、不謹慎すぎる花火。ああいった音楽とアクションの奇妙な調和、優雅さを望んでいたので、続編であれに匹敵するようなシーンが一つでもあれば、と思ったのですが他のアクション映画でも見られるようなシーンだけだったかな、と(ミンチのぞく)。
あと一番気にいってるのは、大きなテーマが軸にあり、そこに物語が結びついている点ですね。
Manners maketh man.(マナーが、紳士を、作るんだ)
このセリフに全てが集約されているのではないでしょうか。英国の階級による貴賎へのアンチテーゼとしてだけではなく、人間はどうあるべきかという強さのある、実によいセリフだと思います。今回はこういう、作品の世界観を表す言葉がなかった気がするんですよね。そのせいで、なんか派手なんだけど芯がスカスカな印象があるんです。
パート3も作成されるようですが、前情報なしにいきなり映画館で見るということは多分しないと思います。大絶賛されてたら見に行くかもしれませんが、自分が望む方向性での好評なのかを正確に測るのも難しそうですし、おとなしくDVDを待っちゃうかも……
続編はいろいろ難しいのだな、と改めて実感しました。
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