映画『ルイの9番目の人生』公式サイト
ネットで検索してたら、偶然ポスター画像がブラウザに表示されたのです。
「9年間で9度死にかけた少年」というキャッチコピーと、儚げな少年の表情に惹かれました。自分が好むような、単館上映系の雰囲気を感じ取り、当日から上映開始だったのが分かって、これ以上の余計な前情報は見ないで鑑賞してきたんですが、かなり面白かったです。
ポスター画像を見た時は単館上映系かと思ったんですが、博多駅にある大きめの映画館(Tジョイ博多)で上映してました。でも一番狭いシアターでポップコーン食う人も居なくて、スタッフロール終わるまで誰一人席を立たなかったので、実質的に単館系上映だったのでは。まぁ初日でこの映画を見に来るような人たちですしね……
ここからネタバレ感想になるので、鑑賞後の閲覧を推奨します。
映画自体は面白かったんですが、鑑賞後に驚いたことがあったので、まずはそっちから書いていきます。今回はたまたまポスターや公式サイトを隅々まで見てなかったのが幸いしたんですが、もしそれを見てたら印象が結構変わってたかもしれないですね。
というのも、個人的には不要としか思えない「ラスト*分の衝撃」的な煽り文句が書いてあったんですよ。そろそろこの煽り文句、やめませんか? 興行上の狙いとかあって、「ラスト*分〜」って書いたのかもしれないけど、鑑賞者がハードル勝手に高くしちゃうので損した気分になりませんか? とにかくお客を呼び込めばあとはどうでもいいですか?
日本版のポスターの雰囲気は大好きで、見た瞬間にWEBで席予約したくらいなんですけれど、この煽り文句が台無し感ありますね。気づかずに劇場行ったので実被害なかったんですけど、事前に知ってたら「え、そんなに意外な展開だった?」と呆れてたと思います。そもそも作品の流れ的に、犯人について特に隠そうとしてなかったですし、そこまで衝撃的だったかなー、と。
作品自体はとても面白いので、予告編や煽り文句とかは誰が作ってるのかと思いました。日本版ですし、監督とか制作陣以外の配給会社が自分たちの判断で作ってるんでしょうかね(憶測でしかないけど)。もう少し作品の魅力を極力殺さないようなプロモーションしてほしいですね。
まぁそれが難しくて例の煽り文句に逃げたんでしょうけれど、最近見た映画は良い意味でパッケージ詐欺してるものもあったりして分かってるなぁとニヤリとするものもあったりしたので、出来ないことは無いと思うんですけど……
これだけ大量の作品があふれていて、驚きをもたらすありとあらゆる手法が消費されつくされている時代なので、ミスリードとかをよほど上手くやらないと、驚かせるというのが不可能に近い段階に来てるのは否めないと思います。まぁミスリード自体も効果的にやるのが難しいとは思いますけれど、嘘はついてないけどホントのことも言ってない、みたいなミスリードや煽りが出来ると理想的ではないでしょうか。
今の世の中、もはや予告編すら見ない方がいい気がしてます。来月公開予定の『サニー32』で失敗してしまいました。『凶悪』の出演者が凄かったので気になってはうっかり予告編を見てしまったら、割と終盤くらいまでの内容紹介してるみたいで、個人的には最悪の部類の予告編でした。ネタバレ満載やんけ。最近の邦画でいうと『ミュージアム』もほとんど終盤まで予告編で描写されてましたし、何なのでしょうか、この流れ。
まぁ世間一般だとここまで予告編で終盤までの展開を見せないと動員が見込めない、という事情もあるのかもしれません。とある頭脳系コミックス、自分的には最高に面白いのに、読解力をそれなりに必要とするからなのか思ったほど売れてないという現実もあったりしますし。とりあえず自分としては、予告編は絶対に見ないでポスターや役者さんなどといった最低限の情報だけ見て、直感で鑑賞するか決めるしかない、と改めて思いました。
作品に直接関係ない文句はここまでにして、内容について述べます。
犯人については、作品の流れ的に特に隠そうとか、ミスリードさせようという意図すら感じられなかったので、最後の真相がそこまで意外と思った人は少数派だったのではないでしょうか。今までに見たことも無かったような大どんでん返しだけを期待して見に行った場合、かなり失望したんじゃないかと思います。
とはいえ面白かったんですよ。最初はファンタジー系のふりしてて、それに対して現実的な回答を与えていくような作風かと思いこんでたんですが、特に不思議な事件は出てきません。シンプルに表現すれば、子供が転落し、母親は父親が突き落として逃げ出した、と言ってるだけです。
そういう分かりやすい状況ではあるんですが、演出の仕方や話の組み立て方が巧みで、見てる最中はどうなるんだろう、という気持ちが持続されて面白かったですね。海の中のシーンや、睡眠にかかる時のフラッシュバック、悪夢、ペットに対するルールなどなど、印象的に残る場面が多いです。
良くも悪くも後味悪いのが、妊娠してた場面でしょうか。また同じこと繰り返されそうな予兆が、あの表情だけで感じられて凄みがありました。
主人公の子役がかなり美少年で知的なんですが、かなり言葉遣いが悪くて生意気で、大人との会話が個性的でしたね。そこがラストの『告白』での伏線になっていたのが鮮やかでしたね。すぐに彼だと実感できましたし。
そういう人物像なのに、ラストで血の繋がってない父親に対して寂しさをぶつけるシーンは、年相応だからかぐっときました。血の繋がっている母親との奇妙な関係性と相まって、親子の定義とは何なのか、考えさせられるものがあったと思います。意外な展開でなくても、映画の面白さは色々あるなぁ、としみじみ感じ入りました。
作品自体は面白いのですが、それを取り巻く状況について色々考え込んでしまいました。できるだけ前知識なしに鑑賞してもらいたい作品だと思います。
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