先日感想を書いた『体育館の殺人』は逆説的にインパクトがある作品名だと思ったんですが、こちらの作品は直球的にインパクトがありますね。ここまで仰々しい名前にしたんだから、さぞ凄い仕掛けがあるんだろうと思って手にしてみたんですが……なんだこりゃ(良くも悪くも)。
館シリーズの見取り図にトイレがないのが気になるような人は、これみてどう思うんでしょう。まぁ見取り図はあるんですが、殺人現場の部屋しか図がないんですよ。こんだけのタイトルの作品なのに、館全体の見取り図が存在しないという。
いやぁ、ほんと未見の人に対する説明が難しすぎる作品ですね。パラレルワールドと新本格ミステリーが融合した、と言ってしまえばいいんでしょうか。この作品の特徴的なところを書いてしまうとネタばれになりかねないので、ネタばれ感想でいろいろ書いてみます。
冒頭の量子力学的な説明などでかなりページを使ってるので、ハードSF的な凄いものなんだろうかとワクワクしてたんですが、あくまでこの先起こる事象に対する説明でしかなかった、といった印象です。『ゴールデン・フリース』みたいなのを期待した自分が悪いとも言えますが。
主人公が間違った推理をすると、大宇宙の意志?がその推理では成り立たないように微妙に世界を改変してく、ということのために量子力学を使ってくるとは。世界の改変のされ方がまた細かすぎて、細かすぎて伝わらないモノマネ大会みたいで笑ってしまいました。なんでそこまでして正しい推理に導こうとするのですか、大宇宙の意志よ。
結局正解に導いた後も特に大きな事象は起こってないみたいだし、なんだったのかという部分も含め、壮大な出落ち感を狙ってやってるなら凄い気がします。とはいえ、ここまでご都合主義な世界改変もある意味珍しいので、思い切ってコメディタッチにしてしまった方が、作品の印象が良くなったんではないでしょうか。
最終的に明かされるトリックも驚天動地というよりは、よくもまぁここまで考えて形に仕上げたなぁと感心した塩梅ですね。物語世界にのめり込んで感動したというよりは、作者の方へ「よくぞここまで作りましたね、お疲れ様でした!」と敬礼したくなったとでもいうか。
ちゃんと今までの推理や人の名前の変遷にも、伏線が張ってあるのはお見事だと思いました。惑星の件もふまえて、全体的な構成が見事だったので感服したものの、異次元と題打ったトリックがあれだから、なんかこう大げさじゃない題名の方が適切だったかもしれません。
日本ミステリも変わった話がいろいろあると思いますが、その中においてもかなり極北な作品だと思います。こんな話見たことない、てのだけは確か。あんまりSFという部分に期待せず、変わったミステリーを構築するためにSFを用いました、くらいに構えて読むべきかもしれません。
面白かったかどうかと問われたら「楽しめました、個人的には」と余計な一言を付け足さずにはいられない。よほどの物好きじゃないと、気に入ってもらえるかどうかは未知数な代物ではないでしょうか。
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