グランド・ブダペスト・ホテル

最近になって、 『ムーンライズ・キングダム』や『ダージリン急行』 といった、ウェス・アンダーソン監督の作品を見るようになりました。大人向けの味わい深い物語が、派手さはないものの独特の絵作りで飾られています。それはあたかも絵本のような。
本作も主に画像的なところに期待して見たんですが、ストーリーにも意外性があって、良い意味で裏切られました。画像サイズの違いによって時代設定が変わることで、入れ子構造が直感的になっているのも面白いですけれど、それよりも何よりもテンポがよくて先が読めない展開の連続がたまりません。ネタばれになるので詳細は避けますが、前知識無しで見たので「え、こんなジャンルの映画だったの？」と驚きました。
映画はいつも字幕で見てたんですが、最近はなんとなく吹き替えで鑑賞することも多くなってきました。今回は吹き替えで大正解でした。作品のポップな感じとあいまって、登場人物の性格がちょっとした口調で表現されてるのもいいし、特に”伝説のコンシェルジュ”の語り口が実にイメージ通りで素晴らしかったですね。
普通にリラックスしてクスクス笑いながら見ても楽しめるのですが、スタッフロール直前の言葉の意味が分からなかった場合は、町山智浩氏の解説をみると、実は骨太なテーマが隠されてるのが分かって奥深さが楽しめるのではないでしょうか。
とはいえ、そういうことを考えずに、お菓子の家のような楽しさを心の底から楽しんでしまうのが一番かもしれないですね。とてもとても、愛おしい作品です。