剣豪漫画と言うと、『バガボンド』や『シグルイ』、『泣く侍』といった作品群を皆さん挙げられるのではないかと思います。この『無頼侍』も広義では剣豪漫画と言えなくもないのですが、ちょっと普通の剣豪漫画とは雰囲気が違います。
という出だしは、前回の記事と全く同じ流れにしましたが、意外としっくりきてるような気がします。作者が『ラッキーマイン』と同じく鈴木マサカズ氏という点だけでなく、作品のもつ雰囲気的にも何か似たような匂いがあるとでも言うか、そんな感じがするからでしょうか。
人生や剣の道の意味を問うわけでもなく、滅茶苦茶強い剣豪どうしで戦うわけでもなく、規格外の狂人が出てくるわけでもない、それでも読んでしまう、そのわけはいったい。
本作では「溝鼠という男を捜す」という目的が当初から明示されてて、『ラッキーマイン』よりは物語の着地点が予想しやすい気もしたんですが、そこに至るまでの道中の模様がかなり独特の雰囲気です。
一巻の表紙の男が主人公なんですが、これが見た目のまんま冴えない男です。独特のナレーション、喜劇か悲劇なのか断言しにくい作風、といったとらえどころの無い感じが主人公の顔つきに表れてるような気がします。
この感情移入できるかどうか微妙な主人公の周りに、曲者ぞろいの登場人物が集まってきて、悲喜こもごもの人間模様が織り成される、このぬるいのか鋭いのか断言しにくい雰囲気が魅力なのかもしれません。今度はあいつら何しでかすのかなぁ、って気分でページをめくってしまいます。
雑誌連載時に読んでいる時は、最終回の直前、二ヶ月前までは物語が終わるとは思っても見ませんでした。「次号、最終回」と前月に書いててかなり驚いたのを今でも覚えています。予備知識無しでコミックスで読んだ人なら、二巻を読み終えた時に三巻で完結すると想像した人はまず居ないでしょう。
それくらい突然、するりと最終回を迎えてしまったわけですが、この独特の終わり方は「らしい」感じで気に入ってます。欲を言えばもう少し続いて欲しかったのですが、これくらいのボリュームが似合ってる作品だったのかもしれません。
余談ですがまみりんに本作を読ませた後、俺の事を「ぶなしめじ」と言ってはニヤリと笑うようになりました。一風変わった時代劇を読みたい人、および妻から一風変わった呼ばれ方をされてみたい人におすすめしておきます。
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