子供ものミステリーと聞きおよび、元気が出るかなと思って手にしたんですが、これがとんでもない代物でした。前情報をろくに仕入れないで、評判がいいらしい、ってだけで色々と本を手にするとたまにこういうことがあるから面白い。
子供と聞くと普通は純粋とか思いがちですが、本作を読んで思い出しました……子供は残酷だってことを。罪の意識が薄いだけに、平気で酷いことが出来てしまうってことを。本作を覆うのは、残酷で、禍々しくて、物悲しく、少し切ない、そんな雰囲気です。
本作では生まれ変わりという一見すると使い古された要素を使っているのですが、独特の使い方がされていてかなり驚かされました。今となってはトリックスターと名高い道尾秀介氏ですが、当時は全く意識せずに読んでいたので、氏の名前を心に深く刻み付ける結果となりました。この作家の作品は、今後も追っていかざるを得まい、と。
こねこと思って撫でようとしたら、思わぬ怪物の口に手を入れようとしていたような、そんな気分。好き嫌いが分かれる作品とは思いますが、心に余裕がある時にでも手にされてみてはどうでしょうか。
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