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日記

クリプー

むかしむかし、俺らがまだ付き合い始めた頃のお話です。
クリスマスと言えばクリプーですよね(=クリスマスプレゼント。命名まみりん)。皆さんは恋人にプレゼントをあげるとき、何も聞かずに自分だけで選んでくるタイプですか、それとも相手の欲しいものを目の前で選んでもらう方ですか、こんな質問をされて怒り狂うタイプですか。
俺は相手に選んでいただくタイプです。ここぞとばかしに小金を貯めて買ったのに、相手に気に入ってもらえないなんてなんか空しくなりませんか? それに俺のセンスって彼女のセンスと重なり合わないらしいし。まみりんも自分で気に入ったものを買うほうがいいって言うんで、そうすることにしました。
で、品定めに繁華街に出かけます。するとまみりん、一直線に宝石屋さんへ。当時の俺の財政なんぞ知る由もない無邪気さでさまざまな値段の指輪を見やがります。まみりんがターゲットを変える度に俺の顔色も変わっていることなんざ気づいちゃいません。そして、まみりん、無邪気にとある指輪を指差しました。値札を見た瞬間とても買えそうにないと分かってるくせに、いちおう逆算する俺。食費を極限まで削らないとダメだと算出されまちた。とほほほほ。
「けっこう……すごいね(値段が)」
「でしょ? デザインがすっごいいいでしょ?」
「……あ、うん、そうだね。ところで、俺にはなに用意してるの?」
「ひみつ」
「ちょっとくらいヒントをくれてもいいんじゃない?」
「だって……恥ずかしいし……」
「……恥ずかしい、って……なに?」
「お金じゃ……買えないもの……」
「この指輪が欲しいんだね! 分かったよ、なんとかお金貯めるから!」


皆さんは「たまねぎご飯」というレシピをご存知でしょうか。用意するものは玉ねぎ1個、ご飯、そして調味料は種類が多ければ多いほどいいです。まず玉ねぎを輪切りにします。そして一切れ取って、フライパンで炒めます。それをご飯の上にのせて、調味料をかけて出来あがり。
このレシピのいいところは、調味料を変えるだけで新鮮な味わいが毎日楽しめるところです。月曜日はしょうゆ味、火曜日は塩味、水曜日はソース味、木曜日はマヨネーズ味、金曜日はコショウ味、土曜日はサラダドレッシング味、日曜日はイチゴミルク味、といった具合に。飽きてきたら調味料を混ぜるだけでこの世のものとは思えない新鮮な味わいが! このレシピの悪いところは、タマネギの直径が段々小さくなっ


そんなこんなでなんとかお金も貯まって、指輪も買うことができました! そして遂にむかえた、クリスマスの夜。
「はい、プレゼント。この指輪だよね、欲しかったの」
「開けていいの?……わ! 本当に買ってくれたんだ、嬉しい!」
「喜んで貰えて嬉しいよ」
「じゃあ、わたしのあげるから……部屋を暗くして、あっちを向いてて……」
真冬だと言うのに汗が額ににじむのを感じながら、俺は素直に後ろを向いて待ちました。そしてガサゴソという音がやんだ時…
「いいよ……こっちむいて……」
ガバッと振り向くとそこには……彼女の……


手作りのセーター(お金じゃ買えない)に編まれた文字が!
LOVE☆MIKIO(本名)
思い出すたびに、あの時は若かったなあ、と思い起こされます。この程度のことで少し喧嘩になってしまったくらいですから。いや、少しじゃなかったか。
それにまだ、この時は想像もしていなかったのです。26歳になるまで、このようなクリスマスが幾度と無く繰り返されるということを。
あの頃は若かった、しかし忍耐強かった、そう強く思うのです(鳥皮をかじりながら)。

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