ミニチュアからシームレスに場面が切り替わる奇妙な冒頭からして、妙に暗示的な感じがしてましたが、鑑賞後に思い起こすとやはり「お前らは監視されているぞ」という意味合いなのだと思いました。そう、そこらに全裸の奴らが潜んでいる……知らない人たちに葬式に沢山来てもらえたとか、まさかそういう意味だったのか、と……
広義的にはホラーなんですけど、自分的には次々と映画のジャンルが変わっていくような印象を受けました。最終的には『エクソシスト』風になりますけれど、それまでが家族の嫌な面をひたすら見続けさせられたり、と居心地の悪さがひどすぎて、もう早く終わって欲しいと逃げ出したくなるような有様でした(しかし視線は一時たりともスクリーンから離れられない……)。
なんと言っても子役のインパクトが凄かったですね。ただそこに居るだけで、絶対になにかあるぞ、と不安感を植え付けてくるものがあります。コッ。
ポスターや予告編がいいミスディレクションになってましたね。先入観があったので、まさか子役が途中で意外と早めに死ぬとは思っても見ませんでした。鑑賞後に物語の意味を思い起こせば「継承」のためには必然だったわけではありますが。
いろいろな家族の嫌な面を見せつけられますが、中でも個人的に一番イヤだったのは、高校生のパーティーにそんな幼い子を行かせるなよ、という例のシーンなんですけれど、今思えば母親は操られてた可能性もありますね。すべては「継承」のために。コッ。
そのあとの大惨事のシーン、すぐには決定的な描写は見せず、息子の表情や行動だけで静かに表現されてたのが、演技が素晴らしかったです。母親の凄まじい顔芸とはまた間逆な抑えに抑えた演技力の凄さ。
ポスターの先入観もあって、実は子役は死んでないのではないかとハラハラしつつ見ていたら、突きつけられる蟻の群れにいろいろな意味でぞっとしました。息子よ、お前、まさか放置してきたのか、と。PG12でありながら、ここまで攻めてきますか……ホラーとして必要なのは分かりますが、このシーンがあるから、万人に気楽に勧められませんね。まぁここだけじゃなくて全編に渡っていろいろと凄すぎるから、気楽に勧めようがないんですけれど。
ちょっとした演出だけで、すべてを説明してしまえてる点がかなりグッときました。ラストで息子が「継承」した、ということが一瞬で分かってしまい、そのあと思い返すとあれもこれもそういう意味だったのか、と戦慄が走りました。コッ。
狂乱の展開から静かなラストの小屋のシーンにうつり、悪魔の体の上に子役の生首が飾られてましたが、意外と綺麗になってたのに驚きました。死んだ子役は偽物なのかと思いましたが、儀式の意味合いからすると本物でないとおかしいはずですから、蟻はたかってたけどエンバーミングしたんでしょうか。
この神々しいラストシーンから明るいスタッフロールの曲へ繋がるあたり、単純な勧善懲悪的な世界観ではない、言いようのない不気味さから鳥肌がたってしまいました。
鑑賞してしまったら、数々の伏線を考察してしまいたくなる魅力が溢れた作品だと思います。いろいろなサイトの感想を拝見した中で、個人的に面白かった記事を羅列しておきます。
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映画を堪能した後であっても、これらの記事をよんで「ああ、あれはそういう意味だったのか!」と様々な発見があって、本当に奥深く懐深い、とんでもない熱量が込められた作品なのだと実感しました。
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