主人公とも言えるトレーダーの父親、自分の子供がとにかく大事ってスタンスなんですけれど、個人的にはかえって感情移入してしまいました。自分が同じような状況になった時、息子を優先させるような気がしてなりませんし。とはいえ唯一感情移入しなかったシーンは、ラストで自ら飛び降りるシーンで子供が生まれた時の回想なんですけれど。自分が現実で出産に立ち会った時、息子を抱えても特に感慨深くなかったので、自分がこういう状況になっても回想しなさそうだな……と思ってしまいました(←作品には全く責任がない)。
太目のおじさん、口は悪いけどなんだかんだで助けてくれて、死亡フラグなセリフを口にしてやばそう……と思ってたら、やっぱり犠牲になってしまいました。子供の名前を言うシーン、そうなるだろうと予想はしていてもウルッときちゃいました。
おばあさん姉妹が作中で必要な理由はなんだろうと思ってたんですが、ドアの向こうに見える感染したお姉さんが凶暴そうに見えず、当惑しているような雰囲気なシーンで膝を打ちました。その後の狂乱と、物悲しさの退避がなんとも言えなかったですね……
色々な人を犠牲にしてきたバス会社のおっさん、自分の欲望に忠実というか、ほんとヤな感じでした。生存競争的には生き物として正しい姿なんでしょうし、作品的には必要不可欠なトラブルメーカーではありますが、現実にもこんな生き様するおっさんが出世するんだろうな……という気分で見てしまいました。最後の列車の場面で、ドアを自ら開けれることで感染が完了していない、と描写しているところが演出うまいなぁと印象に残りました。
トレーダーの設定は単なる味付けくらいと思ってたら、自分たちが助けた会社が原因でこの災害が引き起こされた、と皮肉につながってくるのは感心しました。お見事。お美事にございまする。
ラストのトンネルのシーン、射殺されてしまうのか……と諦めながら見てたら、お父さんのために練習した歌を、居なくなったお父さんのために歌って、その結果助かるという伏線回収の妙味とカタルシスがある演出が素晴らしかったです。
自分は
『28日後…』(
感想)や
『28週後…』(
感想)が大好きなんですけど、本作でのゾンビ描写、気のせいかもしれませんが、上記作品の印象がどことなくある気がします。
走るというだけでなく、ちょっと早送りしてるかのような場面とか、光の加減といった演出まわりに、もしかするとリスペクトを含んでいるのかも知れませんね。特にラスト間際の列車にゾンビが群がるシーン、本作ならではのオリジナルティがありつつも、そういった点があるのかも、と。
『28日後……』は三作目が絶望的な状況なんですが、(制作した国は違うものの)その遺伝子を受け継いだかのような力作が登場したように思え、なんだか嬉しくなりました。今までのゾンビ映画に敬意を示しつつ、新たな側面・味わいを持ち得てるかと感じました。
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