スペインの親日な監督が作った、魔法少女を扱ったサスペンス。これだけしか知らず「どんなんだよ、いったい?」と思いながら映画館に足を運んでみましたが、上映館が福岡でマイナーな映画ばかり上映してくれるKBCシネマとあって、何というか万人向けな内容じゃないですね。
個人的にはかなり面白かったんですが、あまり明るい作品ではないし、グロ描写とかはほぼ無いにも関わらず、こりゃ子どもには見せられないと思いました。率直に言えば、映画マニア向けな作品でしょう。
できれば予告編すら見ずに、前知識なしでいきなり見たほうがいいですね。海外事情とか知らなくても作中で察せられるし、結末が曖昧といったもやもや感もないですし、ストーリーが難解というわけでもないですから。
「いったいこの映画はどこに着地しようとしているんだろう?」
といった思いのまま、翻弄されつつ鑑賞するのをオススメします。
痛烈な魔法少女のパロディなんだろうか、と思って怖いもの見たさで鑑賞しましたが、そういうのじゃありませんでした。まどマギの方がまだ魔法少女してたと思うくらい、なんとも言えない異質感。
むしろ下卑たパロディよりも、本作のほうが居心地の悪さがある(ほめてます)辺りが秀逸でしたね。冒頭の、日本の曲が流れながら女の子が踊ってるシーン、なんであんまに気まずいんでしょうか。
派手さはなく、どちらかとゆっくりとした展開で、BGMも殆どなくて静かなものなんですが、ときおり挿入される曲の効果が抜群で、メリハリがあったと思います。闘牛を思わせるようなテンポのよい曲と共に、ゆったりと優雅に支度するシーンが特に印象深かったですね。
予告編すら見てなかったので、父親のルイスが脅迫するくだりとか、本当に驚きました。それでも元教師なのかと。娘のアリシアがラジオに投稿した内容を聞いてたら、たぶんここまでのすれ違いは発生しなかったんでしょうけれど、、、すべてはほんの少しでも偶然の積み重ねなのに、なぜああなってしまうのかと。
敢えて肝心なところを描写しないことで、却って想像力を刺激する作りが見事でしたね。病んだ女ことバルバラが、大金を稼ぐためのプレイを止めるため合言葉ひとつだけで、「いったい何をしているんだろうか」といった見えないゆえの怖さがあります。誰もが止めるトカゲ部屋だと、合言葉が白紙というあたりが秀逸すぎました。ただの白紙があそこまでの不安感を煽ってくるとは。
一番インパクトがあったのは、ダミアンと魔法少女の衣装を着たアリシアとの対面シーンですね。暗闇で待ってたということは、父親を驚かせようとしてたんだろうなぁ……と思うと、なおさらにあの曲の気まずさが際立ってます。そのあとアリシアがじっと力強い視線をダミアンにむけて、ダミアンが「そんな目で見るな!」と目をそらすあたり、ダミアンの心中も少し透けてたのではないでしょうか。
守護天使ことダミアンと、バルバラの関係を直接は描写していないものの、最小限のしぐさ、やりとりだけでなんとなく想像できそうな塩梅になってるさじ加減がいい。オープニングに繋がるラストシーンが、多くは語ってないものの、我々は想像せざるをえない。おそらくバルバラは過去も嘘をついて守護されたのではなかろうか、そしてそれにダミアンも気づいてしまったのではなかろうか、と。
普段は分かりやすい娯楽作を好んで鑑賞しますが、たまにはこういった海外作品で刺激を受けるのもいいものですね。あまり積極的に他人に薦めるような作品ではないですけれど、少しでも気になるところがあったら、ぜひ前情報無しでご覧になって下さい。凄い作品なのは間違いないですから。
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