映画『殺人の告白』公式サイト
あの傑作
『殺人の追憶』がベースとした、実在する未解決殺人事件から着想を得た作品、と聞き及んで気になって鑑賞してきました。
『殺人の追憶』が人間性を重々しく描写していたのに対し、本作はかなりアクション要素が強かったりして娯楽作として楽しめるように趣向を凝らしている感があるため、『殺人の追憶』みたいなものを見ようと思ってると、少し肩透かしに思われるかもしれません。
ドキュメンタリーというよりはエンターテイメントよりで、小説で言えば松本清張作品を読もうとしたら、実はメフィスト賞だった、みたいな感じでしょうか。自分は幸運にもどちらも大好物な人間でしたので、本作も十二分に楽しめました。
冷静に考えると粗はあるのかもしれませんが、初見だとスピード感あふれる展開についてくだけで精一杯で、ただただ「どうなるんだ、この先?!」という面白さの前では細かい点を気にする余裕もなかったです。
正直、カーチェイスは荒唐無稽にも感じられるんで、無くても良かったんじゃ?と思いました。確かに迫力はあるし、独創性もあるんですが、あれで嘘っぽさが増した感があるんで少し残念だったかもしれません。
とはいえ、全体的にリアリティ重視してはないので、そこに文句を言っても始まらないのかもしれません。被害者達のたてる計画の杜撰さとかは遠まわしなコントなのかと思えなくもないですし、殺人犯のファンが「信じましょう!」というところとか、笑っていいのか悩むシーンも幾つかあったりしましたし(まぁ笑いましたが)。
とはいえ、役者さん達のみせる表情はかなり鬼気迫るものがあって、ラスト間際で主人公が犯人に対してみせる殺意の表情が凄く、カーチェイスがあって二人きりでないとあの表情を出せるシーンがないから、という風に肯定的に考えられなくもない気がしました。
あと気になったのは、全体的に復讐という行為が肯定的に描かれている点でしょうか。もう少し葛藤とか見せてくれても良かったのかもしれませんが、それはこの作品の趣旨と違ったのかもしれません。ラストシーンが見かけ的には後味良く終わってるので、カタルシス重視なのかもしれません。
終盤で明かさせる真相に対し、伏線が全然なかったのが気になる、といった意見を見かけましたが、個人的には「麺を投げろ」というのが、あれは冗談ではなく、本当に言われたのではないか、というのが地味ながら冴えた伏線だったのではないか、と感じています。
いろいろ書きましたが、見終えるまではそういう事考える間もなく、ただひたすら物語の行き着く先を夢中に追ってました。なんだかんだで、映画館にわざわざ行ってまで見たかいがあった、と言える面白い作品でした。
賛否両論あるかもしれませんが、個人的には展開の面白さもあって、かなり推したい作品です。ミステリー好きな方はごらんになってみてはいかがでしょうか。
コメント