最初は『鎖鎌男 VS バズーカ男』という話があるときいて、お笑いネタ的な意味合いで読んで見たんですが、予想に反して本格的な探偵モノじゃないですか。というのも実は原作が狩撫麻礼氏ですから。こう聞いただけですぐに手にする人も出るかとは思いますが、敢えて面白さを書いていこうかと思います。
毎回一話読みきりの短編集で、毎回派手な事件は殆ど起きないんですが、依頼内容が趣向が凝らされていて、どう折り合いをつけるんだろうか、という好奇心から毎回読み進めてしまいます。
一癖も二癖もありそうな依頼人ばかりですが、それらに劣らず食わせ物な雰囲気の所長がいい雰囲気を出してますね。二巻の表紙だとヤクザみたいに見えますが、作中では威圧感を出さず飄々としていて、それでいて酸いも甘いも味わいつくした人生の深みのようなものが滲み出ていて、年齢とともに魅力を積み重ねてきたような人物像の表現力が見事です。
いまどきのマンガみたいな小奇麗さはなく、むしろ泥臭さを全面的に押し出していて、平成的というよりは昭和的、とでもいうんでしょうか。単純なハートウォーミングではない、人間という存在の複雑さ・面白さを描いている作品ですね。一言で言えば、これぞ劇画、という内容です。
文句なしの完成度の高さではありますが、若い頃だとこの良さが分からなかったかもな、と思わせてくれるような、かなり渋い作品だと思います。
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