綾辻氏が描く、ホラーとミステリーが融合した世界。
こう聞くと思い出すのが、『緋色の囁き』です。
昔は小説の類はまったく読む事がなかったものの、今は無きゲーメスト誌にて、いしいぜんじ編集長がオススメしてたので何となく手にした結果、「本格ミステリー、そういうのもあるのか! 文学とかばっかり読んでる場合じゃない、世の中にはこんな面白い本があるんだから!」とミステリー病に罹患してしまったのも良い思い出ですね。言ってしまえば、綾辻氏が居なければミステリー界に足を踏み入れなかったかもしれないのですから、自分にとってはかなり特別な意味を持つ作家さんです。
そういうわけで自然と思い入れが深い作家さんなので、この作品を読む時はいろいろと思うところがありましたが、そんな思いとは関係なくスラスラと読み終えてしまいました。かなりの分量のはずなんですが、とても読みやすかったです。
ホラーとミステリーの融合、という点で見ると、個人的にはホラー90%・ミステリー10%といったカクテルに思えました。作品を包み込む怪しいホラーとしての雰囲気を重視しつつも、作品内で独自のルールを用意しつつ、そのルールの隙をついて読者を欺くあたり、ミステリーとしても面白かったです。
ミステリーとして解決すべき点は伏線も改修してしっかり終わらせ、そうでない部分はあやふやなままになっているところが、かえって作品の怪しさ・雰囲気が壊れなかったので良かったですね。
コメント