俺とまみりんの出会い。
それは今は無きバイト先の書店(仮に春猿堂、とでもしておきましょうか)。
最初見た時は「大人しい女の子がはいってきたなあ」くらいにしか思ってなかったんですが、ある日を境に彼女の存在を意識している自分に気がついたのでした。
俺は焼肉と言うと、薄いのしか食ったことがなかったんですわ。
ちょっと厚い肉を一回食ったんですけど、今思えば高くない肉だったんでしょう、噛み切れなかったんです。だから厚い肉には良い思い出が無かったんです。
その頃まみりんのお母さんは焼肉屋を経営してて、かなり上質の肉を扱ってたんですよ。厚くても柔らかくて、噛むと肉汁がたまらん、ってなかんじの。
「嶽花先輩、焼肉はやっぱり厚いのが最高ですよね?」
「ああん? 厚い肉は噛み切れないから嫌だなあ、俺は」
って言っちまったんですけど、この言葉が無かったら今のまみりんとの交際も無かったかも。この次の彼女の思いやり溢れる言葉は一生忘れる事が出来ません。
「ちり紙みたいな肉でも食ってれば?」
それから俺のまみりんを見る目は変わったのです(悪い方向に)。
まさか結婚するとはあの時は思ってもいませんでした。
今思えば、あそこが人生の境目だったのか……
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