タランティーノ監督の最新作で、密室ミステリー。どんな代物になってるのか気になって仕方がないじゃないですか。早速公開初日に見に行ってきました。
詳細はネタバレ感想で詳しく書くとして、ひとことで言うと「面白かった!」に尽きます。3時間と長丁場で、序盤の展開は遅めではあるんですが、夢中になってしまいました。満足することは間違いないでしょう……監督のファンであれば。
そう、遠回しに万人向けではないと言ってます。まぁR18+作品ですし、監督の作品を一つでも見てたら、だいたい作風はわかってるよね?といった感じで色々察して下さい。
ここからネタバレ感想になるので、鑑賞後の閲覧を推奨します。
ちなみに本作、密室殺人事件ではなく、密室ミステリーと表記されてます。人を驚かせることに特化した新本格派ミステリーという、ガラパゴス化した日本の推理小説ばかり読んでしまってるので、本作がどういう方面で攻めてくるのか期待してたのですが、いわゆる密室劇の意味で使われてます。
つまり、物理トリックや叙述トリックなどでとんでもない真相で驚かせる、といった趣じゃないです。そこは自分が勝手に間違った方向に期待しちゃってたんですが、それはそれとしてセリフ回しや状況だけで緊迫感がずっと3時間近く続き、大変面白かったです。かまいたちの夜かと思ってたら、レザボアドッグスでした的な。
間違ったミステリー読みの端くれの悪い癖で「タイトルの8の文字が赤くなってるのが気になるなぁ。俺だったらイジワルで9人目とか出しちゃうよなぁ。まぁ叙述トリックとか駆使して出すならアリかな」と身勝手かつ根拠の無い予想をしてたら、本当に9人目が出てきて吹きそうになりました!
あのシーンまでは白いイメージがつきまとっていたのに、あの登場人物のあたりから真っ赤なイメージに切り替わった感があり、ある意味確信犯的に物語を破壊する役目を担ってたのかな、と。タランティーノ監督にしては血みどろにならないなあ、と思ってた矢先にあれなんで、まぁ色々な意味で驚きました。
伏線も何もなしにポスターにも居ない人物が出てきたので、見る人によってはルール違反と怒るかもしれませんね。9人目が人じゃなかったりして9と数えられないとかだったり、とんでもない叙述トリック使ってたら最高だったんですが、まぁ個人的にはメタミステリ的な意味合いに捉えてた(9人目の介入で物語が破壊される感じ)ので、あんまり気にしませんでした。もしかしたら自分が気づいてなかっただけで、床から上を見てるシーンとかあって、間接的に他の人物の存在を示唆してたのかもしれないですけれど。
予告編とかで9人目の情報が完全になかったのは、いい仕事だったかと思います。最近、予告編が公式ネタバレになってるという無粋な作品も少なくないですしね……無粋で思い出しましたが、あのシーンにぼかしがなかったのもわかってるなぁ、と。ぼかしがあるだけでなんか興ざめですよね。本当に見せられないシーンは間接的に表現すればいいのですし(毛布を欲しがってあれをあれするシーンとかみたいに)。
目的地に着くまで一時間近くもかかるとは思ってませんでしたが、会話だけで目が離せない展開はさすがでした。テーマ曲の使い方もうまくて、緊迫感があってよかったですね。第4章の冒頭とか、「え、こいつら何者なの?」と気になる観客の前で、効果的に曲が切れるタイミングといい、実に見事でした。
見終えて気になったのは二点。今回はタランティーノ監督、作中に出てきてないんですかね。大統領からの手紙、結局偽物だったんですかね(丸めて捨てられてたけど、冒頭のシーンで唾吐かれて殴ってたし、本物っぽくも思えるんですよね)。
映画館の大きなスクリーンと大音響が映える、下世話で猥雑で荘厳な、いい作品でした。監督は10作で引退宣言とかされてますが、まだまだ色々な作品が見たい、作家性の濃い監督だと思います。なにはともあれ、次の作品にも期待大ですね。
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