ネットで感想などを見ていて意外と多かったのが「山崎まさよし氏のPV」とか「タイトルが出てようやく始まったと思ったら映画が終わって肩透かし」という意見ですね。まぁ確かにそう思うのも当然だとは思うものの、個人的にはあのシーンは鳥肌がたつくらいグッときました。
あの歌詞、それにあわせて挿入される映像、そのシンクロ具合の素晴らしさ。そしてあの歌の名前が「One more time, One more chance」という辺り、敢えて既存の映画の歌を採用するだけあって英断だったんじゃないかと思います。あのシーンが始まって歌詞の内容を聞きながら「ああ、あの二人はダメになってしまったんだなぁ」と終わりを実感し、これで物語も終わるんだろうな、って思ってたのであの直後にラストシーンが来るのは個人的には違和感がありませんでした。
説明不足と言われればそうかもしれません。しかし、三話で彼女の「私も彼も子供だった」というセリフだけで、なぜああなってしまったかを表現しきってるんじゃないかと思います。郵便受けの前で反応してるシーンとか、何かあったんだろうなぁという想像をもたらすシーンとあわさって、いい演出だったと思います。
そういう意味で、ドロドロしたところまで直接的に描かずに済ませたのはすごいな、と。三話が短いので全体で二時間の尺にしてしまってもっとゆったりと描いても良かったかな、とは思うんですが、それだともっと後味悪い思いが長くなりそうなので、甘酸っぱさと苦さのバランス的にはあの演出でよかったと感じています。
人生での今までの出来事によって、作品の受け止め方が変わってくる作品でしょうね。そういう意味で、超映画批評にて
「山崎まさよしの主題歌の歌詞を笑えない人に」とありますが、実にうまい表現だと思います。
個人的に気になったのが、第一話で中学生の主人公が「巨大すぎる人生が」みたいなことを仰々しく述べているシーンだったのですが、
こちらの記事を見て納得しました。あれって大人になった主人公と、当時の主人公とで、両方の回想が混ざってるんですね。図書館大好きな子供だからあれくらい大げさなこと言うかな、とか勝手に妄想してた自分はちょっとアレでしたか。
以下に興味深い文章をかかれてた方々を紹介しておきます。
・
新海誠における再会と喪失の問題
・
誰の代わりでもない君へ
・
恋愛記憶のすすめ
・
a chain of short stories about their distance
なお今発売中の
ダ・ヴィンチ誌4月号(伊坂幸太郎氏のインタビューが掲載されている号)にて監督のインタビューが掲載されてますので、興味のある方はご覧になってみてください。監督の意向が伺えて面白いです。ちなみにその次の号(4月発売)からはスケッチ小説が連載されるようなので、そちらも楽しみです。久々に毎月ダ・ヴィンチ買ってしまうかも。
コメント
はじめまして。kawakitaと申します。
私の拙い感想をご紹介いただき、またTBもたまわりましてありがとうございました。
耽溺した感想でお恥ずかしい限りです。
私は今回が初めて新海監督の作品を鑑賞だったのですが、観てよかったです。今後も注目していきたいと思っております。
はじめまして。タケハナというものです。
コメントありがとうございます。
この作品自体も大変面白かったのですが、ネットで感想を検索してみると
人によって色々な意見や見方があって、大変興味深かったです。
こういう奥行きがある作品っていいですよね。
これをきっかけに新海監督の存在を知られた方が多いみたいで
一ファンとして嬉しい限りです。次回作も楽しみです。
[雑記] 「秒速5センチメートル」を再び語る。
いまだにあちこちからリンクで飛んでいただいているので、一年近く経っているこの作品について、今言えることを。 『この世は、これだけ偶然と運命と想いに溢れているのに、物語性とは乖離してるんだろう?』 小説家とか映画監督とか、創作者という変換器を通してはじ