いよいよ待ちに待った Wii の発売日がやってきました。思えばここまでの道のりは長かったです。出向先のプロジェクトの都合上、月曜休暇土曜出勤になったり、発売日の頃には長崎に行くことになったり、予約することすらままならなかったり、思い切ってGC版のゼルダ買うべきだろうかと思い悩んだり、色々なことがありました。しかしそれらが報われる日が遂にやってきたのです。
思えば運命の日は、ついこの前の土曜でした。近所のツタヤで予約できるということだったのですが、その日はあいにくと仕事だったのです。でも朝10時からじゃないと予約できないというジレンマ。休みだったら普通に深夜から並んで予約するつもりだったのに……
「というわけで、朝8時から10時までまみりんに並んで欲しいんだけど」
この時はまさかあんなことになるとは思わなかったので、こんなお願いをしてしまっていたのでした。
「えー、なんでダーリンのゲーム機のために、わたしが朝から並ぶの?!」
「たのむからさー。朝から8時までは俺が並ぶから、そのあと引き継いでよ」
「えー、明日は雨も降るらしいし、やだー」
「じゃあ午前中は病院に行ったことにして半休にして並ぶ!」
この時点で、プロジェクトに異変があって長崎に行かないですむようになったり、土曜休み月曜出勤の平日勤務に変更になったり、ということを知ってたらまずこんな事言わなかったというのに。ヨドバシで徹夜で並べば大丈夫だったというのに。
「ダーリンばっかり欲しいもの自由に買ってずるい! わたしにもごほうびくれるんでしょうね?」
「うん、まかせといて」
諦めかけてた時にまみりんのOKが出たので、ついついうんうんと頷いてしまうのでした。そして朝6時からツタヤに並び、同時刻くらいにやってきた家族連れの方と談笑しながら朝8時まで過ごし、バトンタッチしたまみりんがきちんと予約一番目をゲットしてくれたのでした。
「本体とゼルダだけ予約しといたから。まさか一度に何本もソフト買わないでしょ?」
「大丈夫だって。ゼルダあったら年末まで過ごせるよ。ありがとね」
めでたしめでたし。予約も出来て安心しきって、数日が経過。翌週の日曜、忘れた頃にまみりんが話しかけてきました。
「ダーリン、覚えてるよね。ごほうびの件」
「ああ、そうだったね。どんなん欲しいの?」
よーし、今日はお父さん張り切って牛丼大盛りたのんじゃうぞー、くらいの大らかな気持ちでまみりんの言葉を受け止めました。受け止めようとしました。
「ヴィトンのバッグ買って」
牛丼千杯くらいきましたけど。
「……え?」
「ヴ・ィ・ト・ン」
「ヴィトソじゃなくて?」
「とぼけるなー!」
「冗談でしょ、高すぎだって!」
「ダーリンが思ってるほど高くないって」
「いや、絶対高いって」
「そりゃ少しは高いかもしれないけれど、長く使えてお得なんだってば。ずっと使って、孫にあげたりできるんだから」
無言で微妙な視線をなげかけてると怒られました。
「なによ、嘘だと思うんなら「ヴィトン 孫の代まで」でググれ!」
嘘だと思ったのでググりましたが、かなりヒットしました。かなり物持ちがいいのは本当みたいです。
「まぁ幾らくらいするか、天神に行って確かめてみようよ」
まぁ3・4万円くらいなら、クリスマスプレゼントと一緒にしちゃってもいいかなぁ、くらいの気持ちで大丸デパートに突入。そしてメイド喫茶以上の居心地の悪さを味わうことになったのでした。なにこれ、俺、ここにいていいの?
だって、なんかすんげー小さい財布とかですでに3万円くらいします。しかもまみりんが欲しいのはバッグです。一つだけ4万円くらいのバッグがあったのでこれにすれば?とすすめてみたら、バッグの下に敷いてあるハンカチが4万円で、バッグは12万円でした。平成不況とか言われる今日この頃ですが、この店の中にだけは不況は存在しないようです。
「まみりん、こりゃ無理だって。庶民の俺らには手が出ないよ……」
「えー、なんでも買ってくれるって言ったのにー!」
「なんでもとか言ったおぼえはない!」
「ダーリンって、釣った魚にはえさをあげないタイプなんだ。そう言えば、付き合い始めた頃はしきりにプールに行こう、海に行こうって誘ってきたのに、一度ゴニョゴニョしたあとからはパタリと誘ってこなくなったよね」
「そ、そんな昔の話は関係ないだろ! だいたい、あれは忙しくなって海とか行く暇がなくなっただけでゴニョゴニョ……」
俺が言い訳してるのを無視して、まみりんは店内を物色しています。どの値札を見ても絶望感が襲ってきます。なんだよ、サンダルで6万円って……
「まみりん、他のお店も見てみない?」
と暗に諦めろと諭したつもりだったのですが、火に油を注いだだけのようでした。それでも何とか宥めすかして他の店も見てみることにしました。
「あー、いいよもう、コーチのバッグでもいいよ。ダーリンの甲斐性なし!」
コーチに謝れ!と叫びました。心の中で。まみりんのテンションの低さというか負のオーラが凄まじすぎて、口に出すのは無理でした。
4万円のバッグでも安いと思えるようになってる自分の心境からして、これってジョジョで言うところのジョースター爺さんがインドの物売りからねぎって安く買ったつもりが実は相場より相当高くてボラれてた、みたいな作戦なんだろうかとも思ったのですが、まみりんがそんな小細工を思いつくわけないのは、その鬼子母神のような形相から明らかです。最初からこの人本気でした。
「んー、じゃ、コレ買います」
とまみりんがふて腐れてコーチの店員さんに言った瞬間、俺はこう言いました。
「え、ヴィトンとかも見なくていいの?」
正直、まみりんの真意を図りかねてたってことがあったのです。単純に値段が高いから有難がってヴィトン欲しいといってるだけなのか、本当にデザインとか質とかが気に入って欲しがってるのか、それによってどうしようか考えてたのですが、まみりんはもうヴィトン買えないのかと思ってコーチのバッグを選んじゃったみたいです。あー、手遅れだったかな。
「あ、やっぱり買うのやめます」
俺だったら言い出せずに買っちゃうところですが、まみりんはあまりにもドライでした。そしてその次の瞬間の笑顔を見て、俺は思うのでした。ああ、虎眼先生のへつらいの笑みをこんなところで見れるとは。へへぇというセリフさえも浮かんできそうでした。
そしてヴィトンショップに戻り、二時間くらいかけてバッグを選別し、9万円ほどのバッグを購入することになりました。クレジット分割だから、大体10万円くらいになるんでしょうか。とにかく買っちゃいましたよ、ええ。
気分的には12万円ほどで Wii を買ったような気分です。世界で一番高い Wii じゃないでしょうか。転売屋で買ったほうがよっぽど安く済んだような気さえします。ああ、やっちまったよ……
そしてその夜、まみりんがヴィトンのバッグを肩にかけつつやってきました。
「ありがとー。まさか買ってくれるとはねー」
「まぁ、いいんじゃない、たまには」
「高かったのに、ありがとね。ひょっとして、私が最近がんばってお弁当作ってるから買ってくれたんだ?」
そう言われて、少し考えて、ただニッコリ微笑みながらまみりんの頭を撫でてあげると、まみりんは気持ちよさそうに目を閉じるのでした。
あれから一週間ほどがすぎ、いよいよ Wii を手にするときがやってきました。あの時は言えなかったけど、今なら言える気がします。でも直接書くのはなんか恥ずかしいから、矢文でクロスワードパズルを送ろうとも思ったんだけど、WEBじゃ無理だから反転文字で書いてみたよ。ドラッグして読んでみてね、まみりん。
AmazonからS端子ケーブルとはじめてのWii、トイザラスでWii スポーツとメイドインワリオを注文しちゃった! 一度に現金で買うと大変だけど、通販ならゆるゆるとクレジット支払いになるから大丈夫だよね? リモコンならではのゲームもしたいんじゃん! だってWii ポーツ遊んでるアメリカの人たちの楽しそうな表情見てたら、買いたくなって当然じゃん? まみりんだって10万近くもするバッグをクレジットで買ってるんだよ? Wii 4台買えちゃうじゃん? だからいいよね? ね?
明日が楽しみです。いろいろな意味で。
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