皆さん演技がすごすぎました。主人公の元殺人鬼のインパクトもさることながら、敵役の現役殺人鬼の薄気味悪さは忘れられないものがあります。ただ微笑んでるだけなのに、爬虫類的な笑顔とでもいえばいいのか、とにかく不気味で不穏な佇まいが素晴らしい。
主人公はアルツハイマーゆえに常に記憶が失われる危険性がつきまとっていて、しかも妄想でも上書きされるので、何が正しいのかがとっさに客観的には分からない点も、良い意味で観客を困惑に導いていると思います(とはいえ主人公にとっては、どれも真実なんでしょうけれど……)。
冷静にみたら鬼畜な主人公の筈なのに、ラスト間際で展開される逆説的な「親子」の繋がりを感じさせる演出が素晴らしかったですね。
それだけに油断しきった観客の前に挿入されるラストシーンが衝撃的でした。ペンダントの中の写真、そして騙されるなという独白。配給会社が安易に「驚愕のラスト5分!」的な煽り文句を一切出してないから、完全に油断してたので気持ちよく驚く事ができてラッキーでした。
感想ツイートで印象に残ったのはこちらですね。ネタバレをギリギリで回避しつつも、作品の魅力、奥深さを伝えている良ツイートではないでしょうか。
結局あのラストは何だったのか?
一度見ただけじゃわからないなと思ってググっていたら、想像の斜め上の情報を入手しました。東京と大阪のみで、別編集版の『殺人者の記憶法:新しい記憶』なる作品が上映されているのです。
残念ながらこちらは未見ですが、この方の感想を見る限り、かなり構成を考えて作られていたのだろうなと想像できますね。ポスター画像も微妙に違っていて、あの口元が気になります。さすがに福岡から大阪・東京まで行くのは厳しいので、DVD発売時にこちらのバージョンも収録してもらえるのを心待ちにしています。
2019/01/20追記
Amazonプライムでレンタルされているのに気づき、遅ればせながら別バージョンである「新しい記憶」も鑑賞しました。
前作を見た時この可能性もちらりと脳裏には浮かんだものの、それを確定させるだけの情報もなかったのですが、あのラストシーンですべてが覆されてしまいました。そしてこのバージョンでは、記憶というものの不安定さを、更にで突きつけてきます。これは凄い……
もはや何が正解なのか、確信を持って言えません。二次元方程式の各項に、具体的な数値が入っていないかのような不安定さ。考えれば考えるほど、終わりのない螺旋に囚われているような感覚。
ただ靴を履き替える、というだけの行為がとてつもなくおぞましく見えるラストシーンが白眉ですね。悪夢のような、素晴らしい体験でした。
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