『1518!イチゴーイチハチ!』3集の感想の募集が12月末日まで行われてます。
【『1518!イチゴーイチハチ!』3集感想コンテスト】3集の感想をつぶやこう!1名様にお好みのキャラを相田先生が描きおろしたミニ色紙プレゼント! このアカウントをフォローし、ハッシュタグ「#感想1518」をつけツイート!一言でも数ツイートにわたる大作も大歓迎! 12月末日締切 pic.twitter.com/Qv33oBq3DV
— スピリッツ編集部 (@spiritsofficial) 2016年11月29日
ものすごく好きな作品ですので、せっかくだからこの機会に自分もきちんと感想を書いてみようかと思います。まぁ同人誌版と一巻でもそれぞれ感想を書いてはいるんですが、今思えば薄い感想にも思えたので、今度は感情を思いっきりぶつけて書いてみようかと。
応募の規約外になりそうだなーとは思ったんですが、ツイッターじゃなくてブログ記事として書き残そうかと思います。140文字はそれを書くには狭すぎる。というか数えてみたら5509文字あったので、40ツイートも連投する覚悟があるのかと言われたら、さすがにムリっす。
まずは未見の方向けの紹介でも書いてみます。本作は『ガンスリンガー・ガール』の相田裕氏が、同人誌で発表した『バーサス・アンダースロー』という作品群があります。同人誌なのに第14回文化庁メディア芸術祭(マンガ部門)で審査委員会推薦作品に選ばれてたりして驚いたのを今でも覚えてます。
そしてこの同人誌版を元に、週刊スピリッツで不定期連載されているのが『イチゴーイチハチ』です。現在三巻まで発売中で、週刊連載がおやすみ中なので、今コミックを三巻まで買えば、連載再開しても続きから読めちゃいますね。
大雑把にどんなお話か説明すると、高校生の群像劇、といったところでしょうか(大雑把すぎた)。うーん、そうですね、言ってしまえば地味な作品だとは思うんですが、とてもなんか好きなんですよ(曖昧すぎた)。
温かみのあるお話なんですが、綺麗事だけじゃなくて挫折についても描かれているあたり、ほんのりとした深みを感じますね。登場人物は普通に近所に居そうな高校生たちなんですけれど、話自体も普通といえば普通なんですが、これはあれですね、『よつばと』を普通の話と説明しているみたいなものなんですよ。
現実に居そうな範疇で、キャラが立ってるんですよね。奇抜な中二的設定だけが、キャラ設定じゃないと思い知らされます。なんというか、キャラがそこに居て、みんな生きてるような感じがするんですよ。彼らのおりなす何気ない光景が、とても、とても、愛おしい。
ここまで書いてみて痛感してますが、未見の方にこの魅力をお伝えするのは、なかなか難しいですね。「ほんといい子なんで、ぜひ読んでみて! 読んでみたら、絶対いい子だってわかるから!」って気分です。俺はキャバレーの客引きにでもなったんでしょうか。
まぁ今なら期間限定で一巻が無料で読めちゃうので、ここまでの俺の文章読んでる暇があったら、一巻を読んでみましょう。読もう、コミックビームイチゴーイチハチ!
ということで、未見の人はもうここから先の文章を読まないでしょうから、ややネタバレありの感想でも書いていきますね。今回『イチゴーイチハチ』の三巻の感想を書くにあたって、同人誌版から単行本のイチ〜サン巻まで一気に読み直してみました。
改めてきちんとした感想を書くために、イチゴーイチハチ関連の本を読み直そうと並べてみたら、なかなか壮観な図になりました。同人誌版も買いやすい状態にしてもらえると嬉しいですね。Kindle配信とかどうでしょ? #感想1518 pic.twitter.com/engIpxNy2I
— 嶽花 征樹 (@takehana_masaki) 2016年12月25日
自分が大学生の頃、もう二十年以上前になりますが、今と違ってネットは普及しておらず、ガラケーすら持ってる人が少なく、ポケベルも店頭に並んでたような時代でした。そんな中、バイトで稼いだ少しのお金、そして有り余った時間で、お気に入りの漫画は何度も何度も読み返す習慣がありました。
そして今は、お金はあるものの、使える時間が少なくなり、そのうえ多様なコンテンツに満ちているわけでして、自然と漫画を読み直すような習慣はなくなりました。数年前までは本棚に入りきれずに泣く泣く漫画を定期的に売りに行ってたものですが、最近は電子書籍で本屋に出かけず自宅で漫画を購入し、iPadの中に千冊以上の漫画が眠っている状況となり、物理的に目の前に見えることも少なくなるので、ますますもって漫画を読み直す機会は減っていく一方です。
そういう状況なんですが、不思議と同人誌版の『バーサス・アンダースロー』は事あるごとに読み直してますね。なんでだろう。なんでかは分からないけど、ふと読み返したくなる瞬間が訪れるとしか言いようがない。
改めて今回読み直しましたが、コミック版と少し設定が違うところがあったりしますね。コミック版にあたり、いろいろ話の展開などを検討した結果、キャラの性格が一部変わってたりしたのかと感じました。
とはいえそんな違和感があるわけではなく、これはこれでいいですね。線が意図的にラフで力強さがあったり、と同人誌版ならではの魅力があります。『シュタインズ・ゲート』風に言えば、違う世界線の話って感じでしょうか。同人誌という形態上、今となってはなかなか手に入りにくいのでオススメしにくいのですが、そのうちKindleとかで同人誌版を配信してくれないかなー、と一ファンとして願うばかりです。
同人誌を一通り読んだあとでコミックス版を読むと、まず驚いたのは烏谷の暗さですね。暗いというか、達観して何かを諦めているような静かさというか。同人誌版は明るくカラッと諦めてたのに対し、一巻の段階ではまだ笑顔がないですね。丸ちゃん風にいえば、キラキラじゃなくなってる。
そういう状況の彼が、生徒会で活動していくうちに少しずつ周りに感化されていき、「これからの3年間、楽しくすごそう」と思えるようになり、笑顔が少しずつ増えていく様が、烏谷の心の成長が、本当にじんわり心にしみました。
そういう変化があったうえなので、三巻ラストのお父さんの反応とか、巻末のおまけの話はグッときましたね。雑誌だけで読んでる人も、あの28.5話を見るためにコミックス買うべきだと思います。それくらい、あの4ページは静かに心に訴えてくるものがある。
烏谷の成長が三巻を通して、丁寧に描かれてきたのかな、と思います。大きな山を超えた感があるので、今後は同人誌版に描かれていたリレーの話とかも来てくれるのかなー、と勝手に期待してます。会長と烏谷がヤキソバ大好きな話も捨てがたいですけど。
といったところで大筋についての感想は書いちゃったので、頼まれてもないのに各キャラの感想も書いちゃいます。
会長。男前すぎる。俺が女子だったら惚れてたね(あれ?)。「お前がしけたツラなのは、まだ松武生じゃないからだ」とか「いいでしょう!!」と即答するあたりとか、キップがいい。俺も高校生の頃にこんな先輩に振り回されてみたい人生だった。余談ですが、二巻まで読んでて「会長のメガネが赤いと気づいてるのは同人誌版を読み込んでる俺だけに違いない……」とほくそ笑んでたんですが、三巻の表紙で思いっきり赤いメガネが描かれてたので、俺の優越感は消え去りました(やっす!)
丸ちゃん。小動物的かわいさ。かと思えば、二巻では「べつに好きじゃないです」という爆弾発言をしたり、でも「別人になってもがんばってるからです」という牧歌的発言をしたり、とほんといい子すぎる。良くも悪くも大人じゃないので、このまま大きくなってほしい。ムービー取りやめに抵抗して、後ろから抱きかかえられてたのがマジ小動物。
三春先輩。もうマジ女神。普段がクールなだけに、3巻の70ページの表情、もう反則でしょ、アレ。破壊力でかすぎ。鼻血が出るかと思った。俺が受験生でなくて本当によかった。
東くん。マジメキャラなんだけど、少し失敗を味わいつつも、今を楽しんでる風がいいし、烏丸にターンって決めてるところはカッコよすぎた。でもそのあとで「烏谷が仕事のどこが楽しいかって聞くから……遊んでやったんだよ」って言うあたりがもっとカッコよかった。いい先輩すぎる。
ザキさん。体格がガッチリしてて、落ち着いた雰囲気で、なんか会長の女房役な感じ(男女逆だけど)。女房役と言えば『七人の侍』で似た雰囲気のポジションのキャラが居て、なんか彼とかぶって見てしまってるのかもしれない。かと思えば忍者衣装を着たり、キャスティングでアツくなったり、烏谷に「己が楽しみこそ第一」と語ったり、とこれまたいい先輩。みんなを静かに支えてる。
佐野先生。物腰が柔らかで、それでいて「ダメ」とか「子供のお使いじゃないんだから」とニコニコしながら語るあたり、ほんといい先生だと思う。社会に出てからのことを考えて、敢えてこう言ってるんだろうなーというのが伝わってくる。教育とは受験勉強のテクニックを教えるだけのことじゃない。
烏谷のお父さん。ほんと親子だと思った。不器用そうなところとかそっくり。烏谷は笑うようになったけど、真顔のままの時も多いのは、やはり父親ゆずりなんだろうか。烏谷が家族にだけぶつけてくる感情を受け止め、静かに不器用に悩まれてたんだろうな、と三巻最後の話を見てしみじみ思いました。2人が歩いてくるのに驚いた表情のままトラックが落ちたシーンは笑った。
この作品を読んでる自分は、もう45歳になり、7歳の息子がいる状態なので、登場人物と自分を重ねて見るような鑑賞ではなく、先生となって彼らを見守るかのような、むしろ自分の子供を見ているかのような気分になってしまいます。
大学生時代に漫画のキャラについて語ってたら「でも漫画のキャラでしょ? 現実には存在しないよ?」と言われたのを思い出しました。俺は別に二次元嫁がどうのこうのという現実見えてない事を言ってたわけではないんで、まさかそんな事を言われるとは思ってなくて呆然として、ちゃんと言葉を返せませんでした。
もう老眼鏡をかけるような歳になりましたが、その無遠慮ともいえる言葉に対する、適切な打ち返しじみたものは未だに浮かびません。ただ「そういう考えや生き方って、虚しすぎない?」とは思います。確かに現実には彼らは存在していませんが、作品を読んで自分の心を通すと、彼らがそこに居るかのように思えるのは、そんなに悪いことなんでしょうか。
はっきりと言えることがあるとすれば。この作品を読んで、みんなの様子を見ていると、自然と目を細め、心が穏やかになっている、この気持は嘘じゃない。みんなが楽しく過ごしてくれるのを心の底から願う、この気持は確かに存在している。
彼らがどんな成長を遂げていくのか、今後も見守っていきたい所存です。
コメント
自分も同人誌版の頃から大好きなので、思わず「そうそう!」となる部分ばかりでした!
好きな作品を同じように好きな人のいる喜びを感じられました。
ありがとうございますm(_ _)m
真夜中のラブレターは翌朝読み直せとよく言われますが
すごいテンションで書いたままアップしてしまったので
少し心配だったりしたものの、そう言っていただけると安心しました。
本当に大好きでいい作品だと思うので
他にも同好の士がいると知って嬉しいです!
地味な作品ですけれど、
そのうちアニメ化してくれないかなー
とか勝手に思ってます。