人によっては「1巻に比べて3巻が失速した」という感想があるようですが、それには理由があったようです。
自分は子供が生まれてからは、小さな子どもや家族が酷い目にあう作品がかなり苦手になってきたこともあり、3巻あたりで子供が助かったのを見てかなりほっとしました。意外と酷い終わり方にならなくてよかった、と。
しかしながら実際は、作者の方が本来思い描いていた終わり方ではなかったのです。注意深く読み込まれた方だと気付くのかもしれませんが、最終話のフリーライターの名刺にヒントがあります。こういうものは自力で発見した時の驚きと喜びが最高ではあるんですが、考えた挙句、あえて明確に記載していきます。
いつまでアップローダーにファイルが残されているかわかりませんが、2015/3/3現在はまだダウンロード可能でした(ちなみにパスワードは6文字です)。
いつファイルが無くなってしまうかわかりませんし、Web上の感想ではこの点については敢えてぼかして「作者からのメッセージ」とだけ表現しているものも多数あり、意味がわからない人には本当に分からないと思います。
こういう仕込みに自力で気付いた時の喜びは重々理解しているつもりですが、20年後くらいに自分の息子が本作品を読んだとき、ファイル消失などに伴い、本格的に意味がわからなくなっているかもしれない、と思ったので敢えてはっきり内容を書いておくことにしました。
ダウンロードしたzipを開く直前は「もしかすると、かなり酷い終わり方をする、真の最終回が掲載されているのでは……?!」と興奮したのですが、実際は違いました。ファイル内には画像が数点格納されており、その最後の一枚に作者からのメッセージが記載されています。
「超バッドエンドにしたかったのですが、表現に規制がかかり、思い描いていた展開に話を進められませんでした。悔しい!」
この一文を見て、合点がいきました。3巻で失速したのは、作者の方の責任ではなかったのだ、と。ここからは妄想ですが、おそらく「eat」に関する部分はフェイクではなく”本物”で進める予定だったのではないでしょうか。過去にも同系列のシチュエーションを扱った雑誌が即回収になったりしたので、漫画という媒体だと扱いづらい代物なのかもしれません(小説だと媒体的にもすぐ目につきにくい点もあってか、結構やりたい放題な気がしますけれど)。
一人の父親としては、そして多くの一般的な感性を持つ方にとっては、あの終わり方が無難で口当たりの良いものにはなったのでしょう。けれど、本来の最終回が見れなかったのは、一人のマンガ読みとして残念な思いです。過去にも色々な作品が編集によって潰されたのを見ているので、本作でどのようなやり取りがあったのかはわかりませんが、作者の望んだ形になってないのだけは確かですから、やるせないものがあります。
しかしながら、本作が不本意な終わり方をしたとはいえ、結果的にあのラスト3ページが生み出したのは素晴らしい。単純に救われない残酷な終わり方とは別の趣があって、良い意味で人によって違う解釈が得られる落ち着かなさを孕んだ、なんとも言えない不気味さがあるのではないでしょうか。
都合よく警察官が助けに来たのは幻で、実は三人とも殺されていて幻覚を見ているのではないか、と思わせるほどの主人公の無表情さ、そして消えゆく煙。たとえ幻覚ではなかったとしても、犯人は主人公に確かな傷跡を残していった、という事実をあの表情だけで読者に突きつけているのはかなりの技量だと思います。
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