発売前は「今週はロボティクスノーツ発売だなぁ、シュタゲ超えるかとか期待しすぎない方が楽しめるだろうなぁ。とか思いつつも、週末は息子達を鹿児島に帰省させて、これでロボノしまくりだぜ!」となんだかんだで期待を抑えられなかったんですが。
なんかやり始めてみると、科学アドベンチャーシリーズでかつて味わったような、冒頭からグイグイと先を見たくて仕方ないというものをまるで感じません。ラストシーンを冒頭に持ってきて盛り上がりを予感させる、という手法は使ってますが、それが効果的に働いているかと言われると、そんなには。
グラフィックや音楽などは申し分ない出来なんですが、肝心のシナリオおよびシステム周りがちょっと酷かったです。普段の自分はゲームや映画などに対するハードルがかなり低くて、他の人がプレイ中に気になるような点もあまり気付かずにプレイし終えて、あとから冷静に見返すと「そう言えばそうだよね」と思う程度なんです。
しかし、本作の場合は全然違いました。あまりにもご都合主義すぎて、プレイ中にツッコミを入れまくってました。あまりにも酷くて、怒りを通り越して、驚き、呆れるばかりです。シナリオライター変わったのかと思ったら自分の好きなシリーズと同じ人だったので二度ビックリです。
ここから先は文句しか書いてないので、いつものネタばれ領域で語ります。
システム的なものですが、モノローグ時に誰が喋ってるか分からないです。左上にローマ字で一応人物名とか出てきますが、それを見逃すと暫く誰のモノローグなのかちっとも分かりません。これは没入感を確実に失わせます。通常同様に人物名を常に出しておけばよかったのに、なぜモノローグのときだけわざわざ外したのか理解不能。
ポリゴンの造詣などは良くできてますが、セリフが変わった時の切り替えがあまりにも不自然だし、芝居も全体的に大げさすぎて、演劇を見てるような気分になりました。演劇は遠くからみる観客に向けてそうする必要があるからだとは思いますが、ゲームではそんなことする必要を感じません。止め絵のほうがよっぽど自然でいいのではないかと感じました。
ついポとよばれるツイッタークライアントみたいな装置によるフラグたてがひどい。一本道のシナリオなのに、わざわざついポを立ち上げて、選択肢が増えたか毎回チェックしないといけないのが面倒でしかない。スキップモード使うと選択肢を見逃すので、それもできないのでストレスがたまるだけ。しかもそうしてフラグたてしないと9章に進めないのでやるしかないのが苦痛すぎる。でも結局は時系列順にシナリオを開放していくだけで一本道でしかないから、ただの時間稼ぎにしか感じられない。
ついポを起動するためにポケコンを使うわけですが、それが使えるのかどうかは、ボタンを押すまで分からないし、ロード直後だとボタン押しても反応しないこともあって、なおさらにフラグたてが非常に不愉快。拡大しないと出てこないジオタグやレポートの存在もあって、ポケコン周りの不快さはかなりのものです。
2ch用語はそろそろやめてもいいのでは。居る夫というネーミングセンスとか、フラウのセリフとか相当酷い。なんでダルの時はそんなに気にしなかったんだろうか、という気もしましたが、あれは秋葉原とオタクメインの中でやってたからなのかもしれません。最後までフラウは違和感ありまくりでした。
ここまで感情移入できない主人公も珍しいのでは。ピカレスクものとかで敢えてそういう人物描写するのならまだ納得するんですが、明らかにそういう意図でやってるわけではないですよね。王道の熱血モノっぽく締めくくろうとしたわけですから。そうなると、この主人公の性格はただただプレイヤーをイライラさせるだけです。自分の得意な分野だけで勝負しようとしつこく持ちかけるあたり、まったく男らしくない。作品内で特に成長するわけでもなく、最後まで器が小さな子供にしか見えませんでした。
グラフィックは良いと先に書きましたが、たまにイベントでの顔が変(デッサン的におかしい)なのが幾つかあって、気持ちが冷めるレベルでした。特にフラウとか重要なシーンでも唇とかが変だったり、顧問の先生の顔がシーンによって全然違ったり、というのは興ざめです。
人身事故起こしておきながら夢を諦めないとか、非常識すぎる。周りの大人も止めないし。これで本当にテレビアニメ化しちゃうの? 罪の意識なさすぎだし、説得力無さ過ぎ。なぜ誰も叱らない? なんというか、こういうところにリアリティがないから、全てが浅く見えてしまう。
格闘ゲーマとか言いながら、いざとなったらチート使うとかどんだけ。チート使って全一とか言われても、ただ卑怯なだけとしか思えない。ゲーマーとして、とか言わずに大切な人を守るためにしかたなくチート使う、ってのなら分かるんですが、あくまで主人公はゲーマーとしてとかほざくので腹立たしい。真剣に研鑽している格闘ゲーマに対し、色々と失礼すぎるし、こんなんでアニメ化(以下略)
コマンドが全然直感的じゃないのに、ゲーム内では革新的な操作とか言われてるのが不自然。鉄拳の10連コンボとかのつもりかもしれないけど、あれはちゃんとボタンでそれぞれ右手とか意味があるのに対し、本作では特に何の説明もないので、全くゲームっぽく感じられないし面白く感じられない。
姿が見えるときじゃないと聞かないウイルスっていったい……ご都合主義、ここに極まれり。
綯がロボ部メンバーを強制的に拉致して連れてきた理由が分からない。意味が無さ過ぎる。
瑞榎が死ぬ意味あったのか。とりあえず誰か殺してお涙頂戴、と思ってるのならレベル低すぎる。
ハッキングしておいて破る条件が格ゲーとか、主人公を活躍させるための無理やりな設定にしか見えない。
難病でコールドスリープしたのに、起きてからはなぜ平気そうなのか理解に苦しむ。解凍が難しいってついポでもレスがあったのに、あっさり成功してるし。
インコ……
ラストのあの「演説」でいきなりみんなの態度が好意的になるのがちょっと……都合よく放送されてるのもビックリだし。あれくらいで教頭先生が丸くなるのもどうかと。人類50億人の命がかかってるのに、なぜ周りの大人たちは人身事故まで起こした高校生達に丸投げしてしまうのも不自然すぎる。どうしても彼らにしか頼れない、という描写が希薄すぎて説得力が無い。
教頭先生とか昴とかの方が常識人でマトモに思えるのに、作中では悪い人みたいな描写してるのは……ちゃんとした理由を説明できてないで主人公達がダダこねてるだけなのに、それが正義みたいに捉えられかねない。
といった感じに、全体的にご都合主義というか、シナリオライターの思いつきと言うか、かなり酷い内容です。シナリオライターのために登場人物は再びトラウマをえぐられたり、歩けなくなるほどの大怪我したり、都合よくHUG暴走して死亡したり、ととんでもない状況です。
こうも出来の悪いゲームを掴まされて毎回思うのは、組織内でチェック機構が機能しているのかどうか、です。納期や利益という厳しさは分かるけど、売り逃げみたいなことして評判落とすのも相当被害になると思うんですが、経営陣はそこまで考えないのかな。でも今回は社長がクリエイター経験あるしなぁ。多人数のものづくりは難しいんだろうな、と色々な意味で痛感されられます。
販売会社の社長のツイートで「ったく、モノを創らないヤツほどガタガタと騒ぐから困っちゃうぜ」「つまりガタガタ騒ぐのは、俺の周りのスタッフの事。決してユーザーの事ではないので安心してね」とありましたが、それってつまり、モノ作ってなかったら率直な意見も通らない現場ですよ、と暴露しているようなものじゃないでしょうか。組織内のチェック機構が働きようがなさそうですね。
良いところもそれなりにあった筈なのに、それを凌駕する数々のお粗末な点(ゲームの内外共に)が多すぎて、シリーズのファンとしてはかなりがっかりしました。
信用を築き上げるのは大変な努力と時間が必要なのに、失うのは一瞬ですし、一度失った信用を取り戻すのは更に大変な努力が必要かと思います。なんだかんだで文句は言いましたが、カオスヘッドに関連するらしい次回作はたぶん買ってしまうでしょう。
同じシナリオライターでここまで質に変化が出たのなら、次で回復する可能性もあるでしょうから。聞くところによると、シュタインズゲートは他社と共同で作業したため、あれだけのシナリオのクオリティになったのではないか、と思ってしまいますし(とはいえ、発売日にいきなり買うのはさすがに控えるかもしれませんが)。
モノ作りをする方々はガタガタ騒がずに、作品のみでユーザーに語っていただきたい所存です。
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