虚淵玄氏が関わっているというだけで期待度が高かったものの、仕事が忙しかったりしてテレビ放送中にはリアルタイムでは鑑賞できず、完結後にDVDで見始めたんですけれど、素晴らしい完成度でした。
何もかもがクオリティが高すぎて、これだけの代物は滅多にみれないだろうから少しずつ見ないと勿体無いぞ、と理性は告げていたんですが中盤以降からはもう我慢できずにラストまで一気に見てしまいました。勿体無いようでいて、これはこれで最高の贅沢だったのでは。
ディストピアといってしまえそうなくらい、ガチガチの管理社会を舞台にした警察モノで、近未来SFと言ってしまっていいとは思うんですが、超能力とかいったもので安易に事件を解決するような事は一切なく、テクノロジーが発達しても理詰めでプロファイルして泥臭く捜査するあたりが、時代は未来でもリアリティがあってよかったですね。
いつもは勘がよくないので大抵のトリックや展開には素直に驚けるたちなんですが、シビラシステムの正体はかなり早い段階で予想がついてた自分に驚きです。とはいえ多分、某名作火星的SFマンガを読んでたからなんでしょうけど。シビラ初見で「あ、メルキゼデク」と思ったとか思わなかったとか。でもさすがに逸脱者達の脳だけで構成されてるってのまでは分かりませんでした。
敵役に奇妙な魅力がありましたね。全員犯罪者なんですが、そうとしらずにいたら普通に静かに一緒に飲んでそうな感覚。なにかかこう語り口の耳障りがよいとでもいいますか、不思議な親近感とでもいいますか。
チェ・グソンの「だっておかしいでしょ」とか、泉宮寺の「勘違いしないで欲しいんだが、これは良い思い出なんだよ」とか、未だに記憶に残ってます。あとは何と言っても槙島の「僕が君以外の人間に殺される光景はどうしても思い浮かばないんだ」に尽きるでしょう。
中盤のクライマックスあたりといい、最終話の実質的なラストともいえる麦畑で日光が消え失せていくシーンといい、盛り上げ方が本当に素晴らしかったですね。いろいろな暗喩や対比が埋め込まれているのも凝ってますし、そういうことを考えずに目の前に起こっている光景そのものだけでも十二分に味わい深い。
「僕以外の代わりが見つかったのか」と質問して、「もう二度とごめんだね」と言われた後の槙島の穏やかな幸せそうな笑顔ときたら。言葉通りにとらえると拒否されたようにみえて、実のところは自分の代わりは居ないと安心したのでしょうか。あの場面で流れる曲の名前が「楽園」というのも頷けます。
この件について逆に考えると、狡噛の代わりも居ないととれるわけで、そう考えるとラストの本は実に意味深ですよね。オープニングで自分自身と殴りあってるかのようなシーンといい、最後のシーンの本といい、二期は一期とはまた違った魅力の展開があるのではないでしょうか。それはあたかも、第一話の冒頭と最終話で同じようなシーンがありつつも、微妙にセリフなどの意味合いが違っていたかのように。
最終話のガチレズ見て「えええ!」と思いましたが、なんと序盤で伏線はってあったと分かって(ストッキング履いてから出てくるシーン)、映像ならではのさりげない細かな伏線など、用意周到ぶりに驚きました。本当に丁寧に作られていて、考察が楽しい作品ですね。これだけ凝っていると、今後も見据えた上でシナリオ作られてるに違いない、とますます期待が高まります。
見終わった後でいろいろな方の感想を見ていたら、放送当時にリアルタイムで感想とか予想を熱く語られてるサイトを幾つか発見して、こういうものはやはりリアルタイムに毎週見て、次回がどうなるのか楽しみにするのが一番面白いのだろうな、と思いました。
劇場版と第二期が決まったようなので、次の機会はぜひともリアルタイムに祭りに参加させていただく所存です。とはいえ、最初に第二期の予定を知った時は、「え、あれから後に続けられるの?」とか「ディストピアものとしてはここで幕切れの方が味わい深いのでは?」と思わなくもなかったのですが、鑑賞しなおすときちんと細かく次回への布石のようなものが描写されてるようなので、好評につき無理やり続けるというのではなく、最初から予定通りだったのかもしれませんね。
でも正直、槙島以上のカリスマ性がある敵役を用意できるのかは不安ですね。それはあたかもバットマンシリーズはジョーカーを超えるインパクトの敵が居なかったように。しかしながら、まどマギの劇場版という難題であれだけのものを見せてくれた虚淵氏ですから、ワクワクしながら次回作を待とうかと思います。
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