短編

みどりの靴下

私の妻の友人は霊感が強いらしく、我々には見えざるものが見えてしまうらしい。

昨年の盆の頃の話です、と断って彼女は話し始めた。

その年は鹿児島は例年にないくらいの猛暑だったらしく、彼女は寝付けずにいたそうだ。

すると、気配を感じた。

開門トンネル[1] … Continue readingを通過するときのような嫌な感じではなく、むしろほっとするような感じだったらしい。

目を凝らすと、人の下半身だけが目に付いた。

その下半身はみどりの靴下を履いていたので、「ああ、昨年亡くなったおじいさんが良く履いてた色だ」と思い、寂しくなっておばあさんに会いに来たんだろうか、と想像して顔をほころばせた。

そして数日後、存命だったおばあさんが急死した。

おじいちゃんはおばあちゃんに会いに来たのではなく、迎えに来たのかもしれない。

そう思いはしたものの、今年の盆は忙しくて帰省も出来なかったから、昨年の盆におじいさんに会えて良かったと思う。

静かに語り終えた彼女の、うっすらとした微笑が忘れられない。

References

References
1 鹿児島県にある有名な心霊スポット。地図から抹消された旧トンネルと、現存している新トンネルがあるらしいが、どちらでも多数の目撃例があるらしい。先輩に自動車で連れて行ってもらおうとしたが、真顔でかたくなに拒否されてしまったのでまだ見たことはない。