松江を訪れて九日目。
夕方、文通相手の七人のクラスメイトに会う。
それまでに、まだ読み返してない手紙を見ておこう。
彼女から送られた九枚目の手紙。
天使の便箋の手紙だ。
消印は一月十一日。
年が明けましたね。
マックスくんは元気ですか。
実はここまで文通が続くとは思ってませんでした。
いつも返事をくれて嬉しいです。マックスくんは周りから変と言われたことはないですか。
私はよく天然だね、って笑われます。
友達のあだ名、私が考えたんだけど、みんなからは変なセンスって言われます。
よく似合ってると思うんだけどなぁ。こんな私に返事をくれるあなたも、変わった人じゃないのかな、って思っています。
変わり者どうし、気が合うんじゃないかな。
いつかマックスくんに会ってお話してみたいです。文野亜弥
どんな返事を書いたんだったかな。
手紙、ありがとう。
寒いですが、いつも元気にしてます。
熱血に何事もマックス、が信条だからね。亜弥さんはそんなに変かな?
あだ名は少し驚いたけど、そういう事が言える間柄なのかな、と思ったよ。
実際にあのあだ名を呼ぶ時に、どんな風に亜弥さんが話すのか気になるかな。いつか会ってお友達の話を聞けるといいね。
俺らの距離は遠いけど、そんな日がいつか来ると信じている。マックス
あんな返事を書いた割には、まだ会えてないな。
もう少しで会える……そう、信じたい。
旅館の春花さんが小包を持って入ってきた。
「お客さん、起きちょられますか? 荷物が届きましたよ」
俺が荷物を受け取ると、春花さんが布団を片付け始めた。
「今日は智子ちゃんじゃないんだね」
「彼女はお休みなんです」
荷物を開けると、十五年前の雑誌『ティーンズ・クィーン』が何冊か入っている。
これに十五年前の俺の文通相手が載っている筈だ。たしか『街で見かけた可愛い娘』のコーナーだったな。
十月号を見る。彼女は載っていない。
十二月号を見る。こちらにもない。
三冊注文したから、もう一冊あるはずだ。
載っていてくれ、と願いながら十一月号をめくる。
すると以前送られてきた写真の少女がそこに居た。
ついに見つけたぞ。俺の文通相手は、彼女だ。
喜んだのもつかの間、失望した。
活字で名前が記載されている部分はマジックペンで塗りつぶされており、代わりにとある名前が書き記されていたのだ。
神無月 真理亜
念の為にと書き写しておいた、クラスメイトの名簿に名前を探すが、見当たらない。
どういうことだ。
たまたま在庫に不備があったのか。
もしくは何らかの目的があるのか。
だとしたら、誰が、どうやって、なんのために。
考え込んでいると、春花さんが話しかけてきた。
「どうされたんです? 何が届いたんですか?」
「古い雑誌の、目当ての部分が落書きされていたんですよ」
「あらまぁ、それはお気の毒に。何ていう本ですかね?」
「十五年前の『ティーンズ・クィーン』十一月号……山陰の美少女特集です」
「それ、松江の可愛い娘が載っとるって、話題になった雑誌ね」
「もしかして、十一月号を持っているんですか?」
「私は持っちょらんけど、近所の古本屋にあるかもしれないわね」
古本屋か……たしか松江駅前にあった気がするな。
同じ号の雑誌が見つかれば、落書き前の彼女の名前が見れるかもしれない。
さっそく松江駅方面に向かって、色々な古本屋を巡ってみた。しかし残念ながら、どの古本屋にも例の雑誌は見当たらなかった。
雑誌を直接見れなくても、塗りつぶされていない彼女の名前さえ分かればいいか。そう思って出版社に電話してみたが、あいにく誰も電話に出ない。
そうこうしていたら腹が減ってきた。スタンプラリーもあと一個ということで、いつもの神在庵にきた。スタンプラリーの台紙をみると、『すもうあしこし』の残りは『あ』だけだ。やってきた三平君に注文しよう。
「あまさぎの照り焼き定食をもらおう」
「へい、あまさぎの照り焼き定食をいっちょう」
そして最後の一品を完食した頃、厨房から源吉さんが現れた。
「これでスタンプが全部集まったかね?」
「ええ、宍道湖七珍を制覇しました。どれも美味しかったです」
台紙を出しだすと、源吉が最後のスタンプを押す。
「スタンプが集まるとどうなるんです?」
「いつもは景品を渡すんだけど、あんたにだけは特別な品を渡しちゃるわ」
源吉さんは厨房の奥に戻り、一枚の名刺サイズの紙を持ってきた。
洒落たロゴとお店の名前らしき単語が書かれている。
「これはお店の名刺ですか?」
「いんや、うちの店の名前は『神在庵』じゃ。ほれ、違う名前が書いちょるじゃろ?」
よくよく見直すと、確かに微妙に名前が違う。
『神在庵』ではなく、『神無苑』と書いてある。
「これって何なんです?」
「まぁそうじゃのう、、、もう少ししたら、知ることになるはずや」
「え、教えてくれないんですか」
「そんな残念そうな顔をせんでもええ。安心せい、あんたが探してる人に、じきに会える。このオヤジが保証してやる」
マックスモードで聞き出そうかと思ったが、後でスマホで調べればいいだろう。それよりも、今は例の雑誌だ。
神在庵を出て、再び松江駅周辺に戻ってきた。
他に古本屋はないんだろうかと駅員にたずねると『小雲堂』という古本屋を教えてもらった。さっき近くを通った筈だが、こんな所にも古本屋があったとは。
小雲堂に入ると、店の奥からよく見た顔のじいさんが出てきた。以前、旅館で背中を流してやったじいさんだ。
「じじい、どうしてこんな所にいるんだ?」
「ここはわしの店じゃ」
「観光客じゃなかったのか。まぁいい、じゃあ店内を見せてもらおう」
「だめじゃ」
「どうして?」
「今日、わしはご機嫌斜めなんじゃ。店内を見たかったら、わしの機嫌をとってごせ」
そういえば、これを欲しがってたんだよな。
「じじいにプレゼントするよ」
レコードを取り出し、じじいへ渡す。
「大林アサヒ『古い名前で店にいます』じゃのう」
「これで機嫌はなおったか」
「おお、すっかりご機嫌じゃ。よく持ってこれたな。このレコード、いい名前じゃろぅ」
「まぁ、少しひねっていて、いいタイトルかもな」
「そうじゃろ、そうじゃろ。この名前、よーく、覚えておくといい」
「なんでそんなにこのレコードを薦めるんだ」
「まぁまぁ、細かいことはええから。好きなだけ、店の中を見なさい」
「じゃあ見せてもらうぞ」
店内の奥の方の目立つ場所に、目的のものはあった。十五年前の『ティーンズ・クィーン』十一月号が飾ってある。目当てのもの見つかったが、一つ問題がある。
値段を見ると”一億円”と書いてあるのだ。
「一億円だって、ちょっと勘弁してよ」
「お前さんがたどり着くまで、誰にも売らないようにしてただけじゃ」
じじぃは一億円と書いてある名札に横線をひき、零円と書いた。なかなか達筆だな。
「ほら、さっきのレコード代じゃ、譲ってやろう」
「ありがとう。でもどうして俺がたどり着くまでって……」
「あぁくたびれた。中で休ませてもらうとすーわ」
俺の言葉をきかず、そのままじいさんは店の奥に行ってしまう。少し気がかりではあるが、目当ての雑誌も手に入ったからまぁいいか。約束の時間まで余裕があるし、一度松江荘に帰ることにした。
そして松江荘の自室に戻ってきて、早速カバンから『ティーンズ・クィーン』十一月号を取り出す。
『街で見かけた可愛い娘』のコーナーを開くと、例の写真の少女が載っている。そして何故か、今朝見てた雑誌のように、名前の部分がマジックペンで塗りつぶされている。塗りつぶされた横には、こう書かれていた。
神無月 真理亜
どういうことなんだ。
また同じ雑誌だけ塗りつぶされている。
さっきのじじいの口ぶりからすると、わざとこの雑誌を用意してたのか?
いや待てよ、じじいの雑誌がイタズラ書きされてるなら、まだ話はわかりやすい。しかし遠くの出版社から届いた雑誌まで、同じようにイタズラ書きされてるのはおかしくないか? もしかしたら、こういう印刷だったりするのか?
そう思って二冊を見比べてみたが、微妙に塗り方が違っていて、手書きっぽい。べったりと完全に塗りつぶされてるわけではなく、何度も細目のマジックペンで線を書いては重ね、塗りつぶしている。
これはどういうことなんだろうか。
彼女の顔は分かった。しかしこの名前は彼女の本当の名前なんだろうか。俺は文通相手を、見つけられたんだろうか。
ここまで考えていて、ふと神在庵でもらったカードのことを思い出した。
『神無苑』という単語を検索してみよう。しかしそれらしき内容はヒットしなかった。
創作小説の中の登場人物の名前に近いものがあったが、これじゃ無さそうだ。
今時、ネットで見つからない単語があるなんて……ますますわからなくなってきた。一人で考え込んでいても仕方がない。後はクラスメイト達から話を聞いてみよう。十五年前に何が起きたのか、明らかになる……筈だ。
そして夕方。
夕日に染まった宍道湖は幻想的で美しい。
彼女のクラスメイト七人が湖畔で集まっていた。
「みんな、集まっているな。俺が文通していた人物が誰か分かった……と思う」
皆が黙っているので、俺はカバンから『ティーンズ・クィーン』十一月号を取り出した。
『街で見かけた可愛い娘』のコーナーの、名前の部分が塗りつぶされているのを見せつける。
「このページに写っている制服姿の彼女が俺の文通相手だ。その名前は、神無月 真理亜……なのか?」
クラスメイト達を見るが、みな無言だ。
メガネこと田中が口を開いた。
「あなたがそう思うなら、そうなんじゃないですか」
「これで本当の名前だと思うほうがどうにかしてるだろ」
ビッチこと理子がため息をつくように言う。
「そんなに彼女の名前が知りたいの?」
「そういう風に言うってことは、やっぱり彼女の名前は真理亜じゃないんだな」
するとサルこと渡辺が言い切った。
「いや、彼女の名前は真理亜だ」
「しかしお前らのクラスメイトの名簿には、そんな名前はみあたらなかったぞ」
チビこと野津がやれやれといった感じで口を開いた。
「お前が見た名簿は、俺ら以外はニセモノなんだ」
「なんだと、ニセモノを俺に渡したのか」
「個人情報保護って時代に、他人に安々と名簿を見せるわけないだろ」
「じゃあ最初から俺に見せるつもりで、偽の名簿を用意してたのか」
「ああ、そうだ」
「なんでみんな、彼女の事を隠そうとするんだ?」
何か憑物でも落ちたような、ほっとした顔でデブこと大森が言う。
「彼女自身から頼まれていたからだよ。警察も呼ぶなって」
「なんで俺が来たら警察を呼ぶんだ?」
ガリこと美咲が突っかかってきた。
「何言ってるの、あなた! デブ君に何したか覚えてるの?」
「なにかしたっけなぁ?」
「デブ君彼が苦手なジャムをお店にこぼして脅迫まがいのことばかりして、『そろそろ外の空気を吸わせてやろう』って何様のつもり?! その場にいたら、かじってやってたわ!!」
すると皆がそうだ、そうだという雰囲気になる。
なんで俺がここまで怒られなければいけないんだ。
ちょっと勘弁してよ。
親友こと由香里がその場の雰囲気を収めるべく話しだした。
「まぁまぁみんな、落ち着いて。マックス君は、自覚がないのよ」
「自覚って何のだ」
「……そういうところよ。悪意がなく、目的のために手段を選ばない……そう、彼女みたいにね」
皆が無言で頷く。
「私達のあだ名なんだけど、あれってみんな彼女がつけたのよ」
「文通でもそう書いてたな」
「困ったことに、彼女は悪気がなかったみたい。無邪気な顔をして、あんなあだ名いうものだから、最初はみんな微妙な雰囲気になってたけれど……」
「不思議なことに、彼女から言われてると、いつの間にか定着しちゃったわ」
「彼女の言うことは、不思議と周りを納得させたな。言葉そのものに、何か力があるというか」
「まぁサルの場合、ガリの言葉の方が色々と納得できたんだろ?」
「う、うるせえな、チビ。俺はお前みたいにラブソング送ったりしてねえし!」
「な、なにおう!」
「若気の至りだな。スパーク!ってなんだありゃ」
「サルみたいな脳筋には、俺の芸術が理解できないんだよ!」
「まぁまぁ、脱線はこのくらいにして話を進めましょう。マックスも困ってるじゃない」
「そうだな、色々と他にも聞きたいことが出てきたしな」
「何を聞きたいのかしら」
「そうだな、まず確認したいんだが、みんな俺の前で芝居をしてたんだな?」
「いくら松江がそこまで広くないとはいえ、あんな都合よく会えるわけないでしょ?」
「そうか。じゃぁ十五年前に何があったのかも教えてもらいたいな」
「……断片的になら、教えてあげるわ」
「なんで彼女は文野亜弥だと名乗って文通したんだ?」
「発端は十五年前の春よ。私達と彼女は、日帰り旅行をしたの。雨宿りをしてたら、隣の洋館から文野洋子さんが手招きしてくれたの」
「あの時出てきた紅茶とクッキー、おいしかったなぁ」
「あんまりおかわりするから恥ずかしかったよね」
「チビの家で食べたのよりも美味かったよな」
「まぁ、確かにあのクッキーは美味しかったな」
「たしかクッキーを誰かがこぼして、片付けてる最中に洋子さんが彼女を『亜弥ちゃん』って呼び出したんですよね」
「彼女のおばあちゃんも似た症状だったらしくて、言うことを否定しないようにって、そのまま亜矢さんを演じることになったの」
「そういう人は意見を否定されると、パニックになることがあるんですよね」
「彼女は文野教授から、時々、亜弥を演じてほしいと言われたそうよ」
「人助けだと思って協力したんだ。もちろん俺達も」
彼女が亜弥さんを演じた経緯は分かったが、まだ質問に答えてもらってない。
「彼女が亜弥名義で文通を始めた理由は、なんだったんだ?」
「洋子さんが文通相手の募集記事を見つけて、強引にたくさん手紙を書かせたそうよ。最初は仕方なく返事を書いたようだけど、二通目からは楽しみにしていたみたいね」
「そして、九月に洋子さんの誕生会があったり、定期的に洋館に集まったりして、洋子さんや文野教授と交流を続けていたの。あのクリスマスパーティの日も、私達だけ帰るまでは、特にトラブルはなかったんだけど……」
「その後何があったのか、俺達は詳細を知らない。ただ言えるのは、その日の夜に洋館は火事になり、洋子さんは亡くなられた、って事実だけだ」
「さすがに彼女は沈んでたから、何があったか聞き出せなかったの」
「結局は未だに真相は分からないまま、卒業式に私達は教室に呼びだされ、『みんなに別れの挨拶をしたい』って言い出した」
「そして『文野亜弥はこの世からいなくなります』と言って、彼女は自分の手首を切ったのよ」
「僕は気分が悪くなって座り込んだんだけど、手前まで血が流れてきたんだよね。だから気づいたんだ、血じゃなくてコチニールだって」
「偽物の血を流しつつ、彼女は『これで文野亜弥は死にました』と言った」
「そういう意味かとほっとしてたら、まだ続きがあったんだ」
「そして彼女は言ったのよ、『次に私もこの世からいなくなります』って」
「コチニールで真っ赤になった手でナイフを握り、もう片方の手首にあてた時、またコチニールだろう、そう楽観してたんだ」
「彼女が床に倒れて顔が真っ白になった時にはじめて、本当の血が流れてる、って気づいたの」
「救急車に運ばれていく直前、すがりつく私の前で彼女が少し目を開けて、呟いたの……『これで私は、神無月真理亜になるわ』と」
やっぱり元から真理亜って名前じゃなかったのか。
「その真理亜って、一体なんなんだ?」
「……それについては、明日、直接彼女から聞いてみて」
「明日、彼女の会えると思っていいんだな?」
「ああ、そうだ」
「先日、不意に彼女連絡が来たんだ。遠くから彼女を探しに来る男が来るだろう、と。出来れば彼女のことは話さないでいて欲しいが、もし話したくなったら、話してもいい、と」
「それを聞いて、わたしたちはこう解釈しました。おそらく、これはマックス、あなたへの試練なのだろうと」
「君の人となりを判断するため、僕らが君への障壁となってみたわけだ」
「警察も呼ばないでくれ、って言われた時は驚いたけど、今じゃ納得するしかないよなぁ」
「殺人事件が起きたと確定したわけでもなく、捜査権限があるわけでもない一般人が、十五年ぶりに手紙一つ受け取っただけで島根までやってきて、脅迫まがいに無理やり話を聞き出そうとするとはなぁ……呆れたもんだぜ」
「私なんか、カツラを取られたんですよっ! ひどい、ひどすぎるっ! 人権侵害だっ!!」
「僕だってジャムで貧血にさせられるわ、臨時でお店を閉めることになるわ、散々だったよ……」
「私は娘に昔の恥ずかしい写真を見せるって脅されるし……」
「チビにはイヤな役をさせちまったな。危機感がある時の様子も見ておきたかったんだよ」
今までの話からすると、俺がマックスモードで聞き出した時も、実際はみんな芝居だったわけだ。
これで話を終わりにしようかと思ったが、まだ一つ気になることがあった。
神在庵の源吉さんから貰ったカードを見せる。
「神無苑、ってなんなんだ?」
「八百万の神が集まる出雲大社。その近くの土地には、あまり似つかわしくないかもね」
「名前の意味はいい。一体これは何なんだ?」
「島根生まれの人は、そこには属せない。外から来た人じゃないとダメなの」
「属する……って何かの団体なのか?」
「そう、そこに入れるのは、転校してきた彼女や、マックス、外から来たあなた達なら可能なの」
「もう少し詳しく話してくれ。これじゃさっぱり分からない」
「明日、全ては本人から教えてもらって……彼女の本当の名前も、ね」
「また明日、か。明日になったら何があるんだ?」
「迎えが来るから、心配しなくていいよ」
そしてクラスメイト達は立ち去り始めた。これ以上は何も話すつもりはないらしい。
最後に由香里が振り向いて言った。
「マックス、あなたは彼女に会いたくてここまで来たんでしょう?」
「そうだな。なかなか会えないが」
由香里はくすりと笑った。
「実はあなた、すでに彼女と会ってるのよ」
「え、どこで?!」
「それも、明日、ね」
今まで見せたことがなかった、高校生のような意地悪っぽい笑顔を見せて、由香里は去っていった。
俺はクラスメイト達が談笑しながら歩いて行くのを、立ったままずっと見ていた。
ああ、俺はあそこの中には入れないんだな。
「そうか。俺は、お前たちにもてあそばれただけなのか」
結局、彼女には会えないままだ。
肝心なところは、まだ良くわからない。
すべては、明日、か。
明日になれば、きっと、すべてが。
(第10章 蝶々の便箋へ続く)