随想

日記と遺書の違いとは

日記を毎日書いている人間が突然死を迎えたとして、その前日に書いた日記は書を遺すこと足りえないのか?

国語辞書をひいてみる。

「死後の処置について身寄りの者などに言い残すこと」

確かにこの通りだが、必ずしも遺産などの話になるとも限らないのではなかろうか。

この定義では若き特攻隊員が家族にあてた言葉は当てはまらないのではなかろうか。

和英辞書をひいてみる。

last will :遺言。死の直前の願い、意志

なるほど。必要なものは、その自覚、そして意思、か。

ここまで考えて、ふと思う。

今死ぬことになった場合、心残りは何だろうか。

残された伴侶への心配は必ずやってくるため、心残りとは言い切れない。

やはり、心残りと言えば、ただ一つ。

まだ書いていない小説がある。

その場としてこのサイトは用意された。十年以上前からの憑き物を落とすために。そろそろ彼らから解放されてもいい頃だろう。いつ死んでも悔いが残らないように。

そう考えると、自分は棺をせっせと用意した、ということになる。

この場合、棺に入れるのは憑き物だけで十分だ。